誇大妄想狂 2020-08-20 11:06:10 ID:5a7104027 |
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( 拳が空振った。急いでパンチを放った腕を引き戻そうとするも、時すでに遅し )
「 オマエッ 」
( 眩い光に息を飲んだその時、成す術なく相手の攻撃の瞬間を、光り輝く刃が膝を捉えるその光景を、ただただ歯を食いしばって見ることしかできなかった。その瞬間、初めてこの女の異能力に理解が及ぶ。それは電気だ )
「 ぐぉぉぉおおおおおッ…!!! 」
( 死ぬほど痛くて熱くて苦しい。膝を中心に餓狼の全身に稲妻が走り回る。全身の筋肉を構成する幾万幾億もの細胞の一つ一つが振動し、炸裂しているような、そんなおぞましい激痛感覚に、叫びを上げざるをえない )
「 …あぐがっ、ごッ… 」
( エステラが股下を駆け抜け終えるとついにあの激痛から解放される。
がしかし、すでに餓狼は白目を向き、上半身の表面からはシュゥゥと煙が上がり、若干の稲妻が残っている。
人間の肉体の大部分は電気を通す物質で構成されている。一箇所に大きな電流が流れれば当然、肉体の至る所にまでそれが伝播する。
それは餓狼でも例外ではない。いくら筋肉を強化しようとも、内部からくるものであれば大きな意味をなさない。
そうして餓狼は膝をついたーーそのはずだった )
「 ゴロズ 」
( 白目を向きながらも、言語機能が正常でないながらも、再び立ち上がる餓狼。そして、エステラの方へと向き返す。
餓狼の全身の分厚い筋肉のおかげで、脳への電気伝播量は分散。その結果、脳へのショックが軽減し、僅かな意識が残ったのだ。
機動力、スピード共に餓狼を大きく上回るであろう目先の少女に対し、ならば、と自分の半身ほどの瓦礫を二つ掴み持ち上げる。次にエステラが動いた瞬間、これらを投擲するつもりなのは誰もが見て取れるだろう )
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「 自分を囮にした…だと、減速開始…ッ! 」
( 天都自身を減速させた頃には遅かった。
ーー正直なところ、天都の手を掴み、こちらへと引きずり込んだその時点で、彼の猛攻に僅かな隙が生まれると思っていた。しかし、悲倉のその考えは甘すぎた。
天都は自分の身を囮にして、容赦のない殺人装置を完成させた。冷静さや手際の良さ、手元にある材料を最大限に活かした資源からの発想、その集大成によって支えられた殺人装置は、黒マスク下の悲倉の口元を歪ませた。
まさに今現在、炎の壁さながらの段ボールが倒れかかる。真横からは得体の知れない注射筒がちょうど悲倉の眼球の僅か手前にまで迫った。並んで、二人が浸かる雨水に導線の先端がゆっくりと接触しかけるその時だった )
「 解除 」
( 瞬間、ズドンッ、と地面に大きな亀裂が入る。水飛沫が飛ぶ。
そして、減速状態にある天都を地面に取り残し、悲倉の身体がへの字に曲がるほどの凄まじい勢いで跳ねる。その過程では、火炎の段ボールを突き破った。
そして悲倉の背中、肩甲骨より下のあたりは、パーカーシャツ共にずたずたに破れ(細切れの黒い布となって)、そこから防弾チョッキのような見た目をした金属質の装備が露呈。しかもその装備の背面は、複数のナイフ、黒く肉厚な装甲部分がまばらに突出する形で飛び出でいる。そのため、装備の背面は凹凸状となっている。
ーーこれら突出した装甲部分やナイフは全て強力なバネによって飛び出す設計である。
仕組みとしては、飛び出す部分をバネと共に最大限に押し込み、極限にまで速力を奪うことで、防弾チョッキのような平面状態を保つことができる。そしてバネは、解除によって、元々の弾性力にさらなる力を加えた状態で、その威力を発揮する。夜明ヶ原に押さえつけられたことから、その反省を生かして考案された試作品である。もっとも、実際に使う場面は、他者に押さえつけられた時であるが。
結果、装甲部分が突出部として飛び出た瞬間、地面との強い衝撃で、悲倉の身体は背から見えないビームでも出でいるかのような姿勢で、宙へと飛び跳ねたのだった。
そうしてようやく跳躍力を失った悲倉の体が地へと落下すると、転がるようにして地に倒れ込む。その衝撃で破損した部品は周辺に散らばった。
一方で天都は、雨水が水飛沫となったこと、火炎の壁がズタズタになったことで、無傷だった。
しかし、天都には既に減速効果が発動され、指をわずかに動かすほんの少しの動きすら何十分もかかるだろう )
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