誇大妄想狂 2020-08-20 11:06:10 ID:5a7104027 |
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( 静まる空間の中、堺が泣き始めると、百足脚の外骨格に当てがっていた拳を下ろし、彼女に近づこうとする。餓狼の拳からは血が垂れている )
「 さてと、オマエたち二人は来てもらうからな 」
( しかし、突如として堺は喚き、そして叫んだ。それも悲鳴ではなく、まるで雄叫びを上げるようなそんな威嚇に近い叫びが空間内の粒子を震わせ、部屋内はおろかアパート外にまで響き渡ると、突如、数えきれないほどに、それこそ等比数列的に増え続ける百足の脚脚が、そしてそこに付随する鋭い爪という爪が、餓狼めがけて迫り来る )
「 面倒なやろうだぜ 」
( まるで、津波に飲み込まれていく気分だった。しかし、餓狼は口角を釣り上げ、全身を力ませると、上半身のジャージが弾けた。そうして、余裕のない距離にまで迫り来る百足脚を前にして )
「 握力700 」
( 風船のように膨らむ拳 )
「 パンチ力最大 」
( 大胸筋、腹筋、広背筋等、グンッとその面積が拡大し 」
「 破壊力増強 」
( 前腕から肩にかけての筋肉のパーツ一つ一つが最大限に大きくなりそこに血管が走る。同時に、身体のあちこちから破裂した水道管のように、血液がシャワーのように飛び散る。しかし、餓狼は口角を釣り上げたまま )
「 頼むから死ぬなよ? 」
( と言い残し、百足の脚が作る全方位からの波にあっけなく飲まれた。しかし、再び訪れる沈黙はそう長くは続かなかった )
「 うおおおぉぉ…ッ 」
( 脚という脚が束となって作る一つの大きな百足の塊が、文字通り、一瞬にして凹み、植物の茎のような断面図を見せた。虫脚の肉片は風圧と一緒に部屋内に飛び散り、そして例の凹んだところに姿をあらわにした餓狼は、全身血まみれになりつつも、パンチを打ち込んだ姿勢を保っている。
時間差と共に再来するパンチの衝撃波は先ほどのものとは比べたものにならないほどの威力ーー廊下壁面には長い長いヒビが入り込み、家具を押し倒し、リビングの壁の悪食はその振動で落っこちる。建物全体は地震でも起こったかのように揺れ動く。アパート住民たちは怯えていた )
「 …はぁ、…はぁ…これは、ヤバイぜ… 」
( 餓狼の肉体は深く抉られた傷と血にまみれ、がっしりした脚が一瞬よろめいた )
「 嬢ちゃん、まだやるかァ? 」
( 頭から流血する餓狼は、ギザギザの歯を見せて笑った。
他方で、堺美波の身体にはかすり傷一つも入っていない。強いて言うなら、風圧で髪型をボサボサにしただけだった。
この不条理を前にして、餓狼の内心にはわずかな怯えが生じていた。だからこそ、それを紛らわせるように笑ったのだった )
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