奏歌 翔音 2020-08-14 23:09:35 ID:5762b1903 |
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>近衛田さん、疾風さん、千秋さん
>981
突如現れた三刀流の男。
異状な気配と圧力を放ちながら剣先を向けるその姿に黄泉は威圧感を放ちながらも男の質問に静かに答える。
【近衛田は余が持ち上げているこの男だ。……それで、余に刃を向ける汝は………余の敵か?】
正に一触即発の雰囲気。
次の瞬間には本気の戦いが始まらんとするぐらいの圧力のぶつかり合いである。
>984
そんな時、近衛田からの言葉と共に黄泉の左肩は両断されていた。
あまりにも唐突な出来事に流石の黄泉も思考を一瞬停止させ、切り落とされた自身の片腕を見下ろしている。
【………………。】
信じられない、といった様な表情。
しかしそれは自らの片腕を切り落とされた事に対してではなかった。
「HeyYomi!君に客人だヨ!後……これはぁボクのぉ余談だけどぉ。洗脳魔法のあとも洗脳形跡も無いから多分素の、近衛田という存在だと思うようん。ボクの嫌いなタイプ。」
思考に被さる疾風の言葉。
それは近衛田の言葉の肯定を意味する。
事ここに至り、黄泉は自らの誤ちにようやく気が付いたのだ。
片腕が無くなり、圧倒的に不利になりながらも黄泉は近衛田を見据え話し始める。
【………非礼を詫びさせてもらおう。近衛田よ。全ては余の杞憂であった様だ。汝がベリアルに洗脳を受けていると推測し、汝の軍人としての本能を刺激させる為に挑発を兼ねた汝への叱咤であったが………どうやら不要であったらしい。】
自らの非を素直に認めた黄泉は先程発動させた全魔完全支配能力を解除する。
するとコントロールを奪われていた近衛田の血は本来の用途を取り戻し近衛田へと集まっていく。
【そして何よりだ。汝の意志が無事であった事。感謝する。】
が、その時黄泉の切り落とされた左肩から先の部分が光り輝き始める。
それは先程まで黄泉を包み込んでいた極黒魔とは全く別のモノだ。
極光魔
極黒魔と対を成し、魔の覇権争いに名を挙げた光の魔である。
邪悪な力を打ち払い、浄化、治癒の力に特化したその力はあらゆる傷を立ち所に癒やし、使い手に安らぎを齎したと云われている。
極光魔は切り落とされた黄泉の左肩から先を包み込むと、見る見るうちにその左腕を修復していく。
そしてあっという間に切り落とされた左腕は何事も無かったかの様にもとに戻っていた。
【汝との戦い。そのような不本意な形で決着ではあまりに惜しいのでな。】
一矢を報いられ、精神的ダメージは確かに存在していた。
だがそれよりも黄泉にとっては近衛田が洗脳されていない事への喜びが大きかったのだ。
それは黄泉が今も尚浮かべている………隠しきれない程の不敵な笑みを見れば誰の目にも明らかだった。
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