奏歌 翔音 2020-08-14 23:09:35 ID:5762b1903 |
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>ホテルサイド
ルミナスさんの体に箱が入るのを見る砂金は、悪気はなかった。
「流石にそれは気持ち悪いな。」
そう言いつつも砂金は恐らく、この場の誰よりも早くターナが繰り出すしなる鞭を銃で逸らす。何故なら、ターナが鞭を使い、距離を保ちつつも襲うのは攻撃ではなく、「魔力を付属させた鞭」でルミナスさんから断罪の翼、その箱を回収しようとしていたからだ。
「あなたの言う事も分かるわ。お互い信頼はできないでしょうね?でも、あなたの隣にいる男は____残忍で、酷く、人の心もない殺人鬼よっ。殺す事に意味も考えない、そんな男.......っ!.......道具のようにしか動かない、その男の言葉は悪の組織の行動と同じ事よ。それを使って何かするかもしれないなら、止めるのは同然でしょう?」
ターナは年下のように可愛がっている親友の魘される姿を、泣く姿を、苦しむ姿を歯で噛み締め、ルミナスさんにあくまでも冷静に問いかける。
「私達も____争っている時間はないの。誰かの為に、街を守らなければならないのだから。」
そう言い軽いフットワークで壁を蹴り飛び上がればルミナスさんに鞭を放つ。それを防ごうとする砂金の間に、魔力が低いものには見えない____砂金は見えないが、ターナとルミナスの間に、【大狹】が割り込む。
「kill!keel!」
咄嗟に鞭を逸らすターナは天井の電灯に巻き付かせ、ルミナスさんと同じ視線を維持する。
「箱を、渡して頂戴。其れがどれほど恐ろしいものか、あなたは分かってないのでしょう?」
大狹はその間にも2人を斬ろうとするが、砂金は大狹を押さえつける。
「手応えがあった。」
つけた傷の後や風音から位置を判断したのだろう。大狹は抵抗して四肢を動かす。
「.......中央は辞退か。」
頓着する、空気の中、ディーリスさんの服の裾を大きな手がちいさく引く。【抑圧】だった。
「おで、止める。いぐ。おで、来て欲しい。」
床に赤い文字が書き上げられる。
「"We settled here. Let's return. To me. "(私達は今此処に揃いました。帰りましょう、私に。)」
その言葉を皮切りに大狹は音ともいえぬ何かを口にすれば、布のように砂金の拘束から抜け出してルミナスさんの体の中の、箱に素早く入り込む。
同時に、ルミナスさんの魔力をバラバラに分解しようとする【大狹】の力と、判断する為に停止、行動をする【天秤】の力が大きく渦巻いた。
>遊園地 第2の部屋
「人の為。そして私の為です。」
黄泉さんに対する近衛の言葉は短いものだった。
「世界は何時までも混乱し続けます。されど、それを止める為に、安息の日々を手に入れる為に私達は戦います。そして、私は何故今此処で、何故生きているのかは分かりません。ですが頼られるのであれば、私は守ります。
私は、記憶がなくとも、必要とされなくとも。私として、此処に立ち、この身が滅びるまで人々の為の刃を振るい、私を高める。それだけであります。」
終わらない戦争、人々の争い。多くを見てきたが故に、それがエゴだともわかっている。
それでも尚、前に進み、ただ只管に自分の信じる道を行く。
____ただ、もし、わずかでも己を思い出せるのであれば。まずは信じてみるのだと。
そんな近衛の目は強い意思と決意を持っていた。
その目を降ろされた疾風は階段五歩下で「うげぇ。」と嫌悪していた。
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