匿名の屑 2020-08-13 11:31:11 |
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(他所から見れば薪に火を起こしているだけ、然し痛々しいまでに震えながら指示を受ける前にまるで”知っていた”かの様な動きで黙々と作業を熟す有様は異常な光景を生んでいる。問い掛けに応答せず彼女へ送る視線はまるで晩酌を愉しむ獣の様、この瞳は良く見てきた。彼の瞳の中に炎の残花が映り込んだのを横目に彼女へと視線を移す。薪全体に浸食し徐々に燃え上がる炎は赤く揺らめき、彼女の顔を照らし出した。今一度名を…絶望の淵に立たされた様な顔付きの彼女へ言葉を投げ掛けようとして、代わりに男の冷徹な声が室内を包んだ。
???緊迫していた空気が今度は凍てついた。彼女が、…アンナが叩き割られた硝子の様に男の発言で受けた衝撃により生気を奪われて行く。
“躾け”と称して、乾いた音を響かせる鞭を傍に、褐色の肌を生えらせる白いシャツ一枚となった男は艶かしくも恐ろしい、悪魔の様に見えた。冷たいのか、熱いのかも分からぬ指先が離れ布一枚纏う事を許されぬアンナの元へ男が歩み出すのと同時に酷い焦燥感に声を上げて。)
??アンナ………!逃げて…!アルベリクの言う事なんか聞いちゃ駄目、逃げてッお願い…!
(この身を起こそうとして再びベッドへと戻された。男の話に不審がっているうちに拘束された両腕がこの場から離れる事を許さ無い。今直ぐ走って彼女を守りたい筈なのに、しっかりと嵌められた手枷はぶつかり合う金属音を奏でるだけでびくともせず。己が攫われるずっと前から男の支配下にあったアンナにとって彼の命令は絶対なのか。目の鼻の先だというのに手足も出せぬまるで彼らはスクリーンの向こう側にいるかの様だ。己のせいだというのに彼女が罰を受ける必要など何処にも無い、締まりかけた喉から絞り出しながら必死に訴え掛け。)
アルベリク、手を出さ無いで!アンナに触れたら許さ無いわ…!
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