太陽 2020-07-04 21:09:45 |
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新堂 渉
( 厳しく怒った振りをしてみたところで、結局威厳を見せられるわけではない。「 大人の世界は大変だからな。苦労するよ……これ、主任には内緒な 」本音を隠さず話しては、口外すべしとばかりに忠告を。立場上あまり口にして良いものではないが、ほんの少しくらいなら許されるだろう。「 はいはい、そんなことは良いから遅くならないようにしなさい。反省文とは言わないが、ちゃんと遅刻の届けを出しに職員室に行くこと 」好意が含まれているのに気付く筈もなく、顔色を変えずに注意。教師が遅刻を黙認したら生徒の為にはならない、と手の中のバインダーから届けの用紙を取り出して目の前に差し出し。反省文などと面倒なものを書かせないのは自分が不要だと思っているからということもあり。「 お前な、それはバレるぞ 」尚も罰を逃れようとする彼女の頭を軽く小突いてやり。それから校門を閉めて昇降口に向かって歩き出し。早く行くぞ、とでも言うかのように片手で彼女の背中を押して歩き )
ほら、樋浦。急がないと一限に遅刻するぞ。早くしないと俺まで怒られるんだからな?
神谷 紬
( 職員室へ向かう道すがら、掛けられた声に振り向くよりも先に手の中の教材が無くなると、驚いて瞬きを数回。それでも、相手がいつも熱心に聞きに来てくれる彼であると気付けば「 今日はどうしたの? 」と問い掛けを。急ぎ足で進めてしまったからこそ、理解できない箇所があるのは自然というもの。わからないところをそのままにしない姿勢は評価に値する。「 最後はもう少しゆっくりにすれば良かったかな。此処の文は── 」教科書を見ながら合わせるように歩く速度を落として説明を始め。教科書を指でなぞり、場合によって自身の持つ授業ノートを広げながら話し。一気に駆け足で伝えては意味がない。「 郁巳くん、此処まではわかる? 」時折緩く首を傾げて質問を投げ掛けつつ、ゆっくりと噛んで含めるように。夏休みが来たら夏期講習を通してしか教えることが出来ない。今のうちに出来る限り教えてあげないといけないな、との焦りは少なからずあり。三年にとっては勝負のとき。良いところを目指す彼は尚更。一通り説明を終えると確認を )
これで大丈夫そうかしら? まだ何かあるなら、これから付き合うけれど。
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