奏歌 翔音 2020-06-29 09:46:53 ID:5762b1903 |
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【昼 アミューズメント施設 ゲームセンター】
たまたまだった。
食品売り場も併設してる近年できたあの中央……東野桜さんが表向きで行っているグループが作った大形施設の安売りのチラシが投函されていたから訪れた今日。ふと喧騒と人が紛れる砂金とは殆ど無縁だったゲームセンターの少し奥にあるクレーンゲームが立ち並ぶ中に、可愛らしい大きな兎の縫いぐるみが見えた。
……渡したら彼女は、雪音さんは喜ぶだろうか。
そう思った時には誘われる様に中に入ってしまっていた。
そして数刻が経ち、周りの人から目立ってしまっていた。悪い意味ではないが砂金としては不愉快を超えて恐怖を感じる程の視線だった。
ビニールでは収まらず用意された大きな紙袋に多機種のクレーンゲームから入手された可愛らしかったり、美しかったりする所謂女性受けや子供受けがしやすい物がここぞとばかりに詰められている。
クレーンゲームはスマホゲームの課金だとニシの新人は管理している犬のようなもののブラッシングをしながら話していたことを思い出す。しかし砂金には鍛えられた空間把握能力とその眼が備わっており、かつスナイプする時もあるその手はクレーンの精密かつ細かい操作等赤子も同然。
つまるところ不正の無いゲームセンター泣かせになっていた。おひとり様1つまではちゃんと1つしか取っておらず転売する意思もない。ただ雪音さんが喜びそうだ、好きそうだで転々と回ってしまったのだ。
「おかあさん!あのおにいちゃんまた1回で取ったよー!おとーさんもとってとって!」
「あたしもあのぬいぐるみさん欲しいよぉー!」
大人達はその手腕に呆気を取られ子供達は無邪気に親の財布を減らす作業へと誘導し店員は止めたい意思と茫然とするしかない光景に困惑していた。そして砂金も困惑していた。
目立っている。
良く考えれば砂金の様な帽子を深く被った大柄な男が明らかに子供向け女の子向けの物を1回だったり1000円以内に取っていたりすれば普通の人からは目立つものだったのだ。つい雪音さんのことを考えるとやる気や本気が出てしまう様になった事に焦りを覚えながらも押したボタンは止まらない。
緩いアームは見事に60cm程の箱の上蓋の隙間に入り引っかかる。持ち上げられたそれは穴へ誘導され、アームが開きズレていけば……クッションの敷かれた取り出し口にモフっと落下した。
____やってしまった。
上を見上げ天を見上げ後悔を飲み込む。周りは凄い凄いと賞賛していたが砂金は目立つ事を嫌う。ここでやめておこう。そう思った矢先にまたひとつ彼女の好きそうなものが見えてしまう。嗚呼、なんて大型施設。大型施設所か遊園地かここは。目立つ事と雪音さんの笑顔を天秤にかければぶれるが間違いなく雪音さんに転がってしまう……そんなとんでもないストレスと悪循環に見舞われていた。
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