奏歌 翔音 2020-06-29 09:46:53 ID:5762b1903 |
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>8 東堂 伊吹
>9 神谷湊
【ロジャー/【502】号室前】
角待ちするように体を隠し顔を出すのではなく、スマホのカメラレンズだけを出して画面の中に映し出された【502】号室へ続く廊下の状況を見守った。
先ほどは明かりもない暗い夜道から遠目で見ていたが、ここはアパートの廊下ということもあり蛍光灯の明りがついている。
(……?)
女子学生が再び何かをささやいた。
耳をすまそうと思わず前のめりになってしまいそうになったが何とか堪えた。
(__危ない危ない。せっかく隠れているのに危うく身を乗り出すところだった。)
姿勢を元に戻したロジャーはふぅと小さくため息をついた。
そして、再び画面へと目を配る。親指と人差し指を画面に滑らせ、画面に親指と人差し指を置いたまま指を広げる動作を行う。
ズームされた画面の中に女子学生の手の先まで繊細に映し出されていた。
鍵穴にピックが差し込まれる様子を静かに見守りながらロジャーは腕時計をチラリと見てから再び画面へと視線を戻した。
ここへ来てからは蛍光灯の明りによって姿が今でははっきりと分かる。
身なりは腕には腕章をつけてパンツスタイルの出立だ。彼女にとってはそれが正装なのだろう。
喧嘩にでも負けた腹いせなのだろうか……。
いかにもヤンキーで未成年のような彼女に今以上に前科が増えてしまっては今後の進路に響いてしまうかもしれない。
止めなければ。
そう決心して身を乗り出し声をかけようとしたその時__。
「……なに。」
一足遅かったか。
女子学生はあっけなく部屋へと侵入してしまった。
幾らなんでも早すぎる。些か呆気にとられるロジャーだったが再び腕時計に目を向けた。
ピックの持ち方や道具の扱い方などからして素人だろうと思い込んでいた。
しかし、鍵を解錠するまでかかった時間は素人のそれとは違う。
安いボロアパートの扉だからだとしても道具の扱い方が素人であるならピックをへし折るか鍵穴を駄目にするかのどちらかだ。
道具の扱い方は素人だ。しかし、鍵の解錠はプロのように早い。
(__考えられるとしたら。)
扉の前に立つと鍵穴に目をやる。鍵穴の周りが傷だらけだ。
つまり…これは…常習犯。それもこのアパートの扉だけに関してはプロと言う事なのだろう。
そこまで結論付けて、ロジャーは口を開いた。
「__よし。中に入ったら不法侵入になってしまうから郵便受けから見てみよう。」
ここまでついて来た湊に告げた。
ドアに取り付けられている郵便受けにハンカチを使って押し込んでみる。
隙間ができて指で押さえていなくても中が覗ける状態となった。
膝をついてかがみ込むとロジャーは中の様子を伺った。
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