主 2020-06-13 07:30:58 |
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>エリス
(魔王が討伐されて数週間が経った。世界は平和を取り戻し、商人が自分の店の商品を声高に喧伝する声が、漁師が水揚げをしながら叫ぶように話す声が、子供達が陽光の下で駆け回る長閑な雰囲気が街に村に溢れていた。その光景が戻ってきた背景に自分がいたという事実は王族に奪われ、国の安寧と魔王によって脅かされていた多種族への信頼と支配権の掌握に使われてはいるが、それでもこうして平穏な日々を誰もが過ごしていられる事はこの世界に生を受けた身として喜ばしかったし、平穏だからこそ『彼女』との約束を果たす旅が出来るという個人的な喜びもあった。勇者達と旅をしていた時は大所帯故の楽しさはあったが、誰しも___殊勇者には___『魔王を討つ』という刺し違えを覚悟する必要があった程、過酷な旅でもあった。それに比べて今は魔王討伐の栄誉こそ手放してしまったが物騒な覚悟を決めてかかる必要もない、穏やかな旅だった。無論、野盗や魔王の残党など全く危険が無い訳では無いが未知の地へと旅をするのに危険は付きものだし、それに用心をしない程英雄を気取っているつもりも無い。そういう訳で非常に道行は安泰で、エルフの国に近い街まで旅路は進んでいた。手先の器用なエルフ達と人が交流する街であり、王国勢力圏の果てというだけあり、旅をする者や彼等へ向けて商品を売ったり、エルフ達の作る製品と人が作った製品を交換する商人達が往来に、市場に集まり王都並みの活気を出していた。そんな折、ふと聞き馴染んだ声が聞こえてくる。喧騒に紛れて微かにしか聞こえなかったが確かに知っている声だった。声のした大まかな方向へと足を向ければ屈強な荷持ちや商魂逞しい商人達の中に混じって金と紅の対比が眩しい、「少女」と形容出来そうな女商人が店先に品物を並べ必死…という訳でもなさそうだが商品の喧伝していた)
『休んでいる所申し訳ないが、火打ち石と砥石をくれないか?砥石はなるべく硬いものが良いんだが』
(来客が少ないせいか小さく溜め息を吐く彼女を見て、柄にもなく悪戯心が沸いたのか素知らぬ顔で店へと赴くと至って普通の客のように振る舞おうか。向こうも親しげに話しかけられたならともかくただの客が知己だとは思うまい)
>all
(旅に宿は不可欠だが、何処にでも宿がある訳ではない。ましてやこんな雨の日等は悠長に宿を探している暇は無く)
『全く…急に降り出したな。エルフが森を守ってるお陰でずぶ濡れにならずに済んだが…】
(突然降り出した雨には流石に手も足も出ず、近くの大木の洞で雨宿りをする事にした。エルフの国というだけあってか数人の大男を詰め込んでも平気な大木は幾らでもあった。とは言えいつまでこの雨が続くかは分からず、今はただ雨が止むのを待つばかりであった。手持ち無沙汰になれば洞の中に落ちていた枝を一本拾い上げるとダークを取り出し、細い枝に刃先を使って何やら文字を刻み始めようか
(/早速ですが絡み文を出させて頂きました!)
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