シンデレラ 2020-06-06 10:42:05 |
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( どのくらいの時間が過ぎたのか、読み始めた本はかなりのページ数を捲っていたことに気付き、目が疲れぬように遠くを見つめながら透き通った湖の水面を覗き込む。森の中の静けさと心地よい風がすり抜け、頬をするりと撫でていく。再び挟んだ栞から現実から空想の世界へと吸い込まれるように読み進め入れ込んでいった。──と、その耳に馬の蹄の音が聞こえ止まると己に問いかけがされて驚き弾かれたように本から顔を上げる。そこには端正な顔立ちで煌びやかな衣装に身を包んだ男性が立っていた。明らかに己との身分差を感じ本から出てきたような王子様だと思わせる彼の風貌に幻か何かだろうかとほうっと見惚れて言葉を失っていたが、我に返って立ち上がりスカートについた埃を軽く叩いて落とし本を大事そうに胸に抱える。そして控えめな口調で返答しながらも、どうしてこんなところに、といった様子で首を傾げ )
これは…異国の恋のお話です。ちょうどあなたのような殿方が出てくるような。あの、道に迷いました?
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