語り部 2020-04-21 09:24:51 |
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(草木も眠る丑三つ時。帝都の中心から少し離れた場所に建立された寺、妙法寺。華やかな外界と寺門一つ隔てたこの場所では、深夜にも関わらず読経の声が響いていた。僧都の修行?否。僧侶達が声を揃えて読み上げるのは怨霊調伏を祈願する経。一心不乱に読経する彼らの前には一体の観音像。だが、それは観音像としては些か歪な形をしていた)
「…こんな夜中まで読経とは、随分な心がけだ…」
(そこに読経を遮る男の声が一つ。それが寺の者では無い事は僧侶達が上げる経を小馬鹿にするような声音からも容易に想像が付くだろう)
「何者だ!」
「名乗る程の者じゃ無いさ。俺はその像に用はあってお前達に用は無い。…まぁどっちにしろ…」
「喧しい!!」
(男の近くに居た僧侶が錫杖片手に男へ飛びかかる。手にした錫杖を男の額目掛けて振り下ろし__)
「…人の話はよく聞くもんだ。なぁ?坊さん?」
(男の額から一分程の隙間を空けて止まっていた。それは僧侶の不殺生戒が為したものではなく、男の指が振り下ろした錫杖を受け止めていたのだ。男が錫杖を握ると、僧侶がどれだけ力を込めようと錫杖は動かす事が出来なくなり)
「どっちにしろ、皆殺しだ」
(低く、しかしてはっきりと男が宣言する。錫杖ごと僧侶を片手で持ち上げると、寺の柱目掛け、まるでちり紙でも捨てるように投げ飛ばす。その膂力は明らかに人の域を超えており、それを見た僧侶の一人が思わず叫ぶ)
「貴様!妖奇士か!」
「ご名答」
(何故俗世から離れているはずの僧侶が妖奇士などという言葉を知っているか…それは彼らがただの僧侶ではなく、討魔士達と手を組んでいるからであった。帝都は人が集まる場所。人が集えば自ずと魔が差す者も増える。妖奇士が帝都で暴れるのを防ぐべく、法力を持つ僧侶達は討魔士と手を組み、帝都に集う妖を水際で防いでいた。その要こそ、僧侶達の前にあった観音像であった。故に彼らは男の正体に気付けたのだった。それを否定しない男の言動で、寺の空気が一変する)
「まぁ正体がバレたのなら遊ぶ必要もないか…」
(男は面倒臭そうに言葉を発し、僧侶達目掛けて飛び込んでいく。深夜の帝都で、戦いの火蓋が切って落とされた瞬間だった____それから幾ばくもしない内に、シンと静まりかえる寺から男が出てくる。男は無傷。口に薄らと笑みを湛えていた)
「これで一つ…」
(寺の中は地獄と言っても過言では無かった。読経の場に居た僧侶達は勿論、寺男に至るまで、寺の中のあらゆる生命の灯火が消えていた。そして男の手には一本の杖が握られていた)
「魔を断つ、って触れ込みだったが…結界も切れるようだな。コイツは…」
(そう呟き、剣を見る男の目はとても愉しそうだった)
【/お言葉に甘えて早速絡み文を出させていただきました。これからよろしくお願いします】
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