匿名の刑事 2020-03-25 19:54:27 |
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タブレット、ですか……!とにかく中身を見てみましょう、何が重要な手がかりがあるかも。
( 切羽詰まっていた数分前と比較すれば突破口は僅かに切り開かれたようであったが、紙切れの裏側に小さく記された、暗号らしき不可解な数字の羅列が不安を煽る。しかし何やら彼にも収穫があったようで、その逞しい手に掲げられたタブレットらしき端末をそっと受け取った。手始めに期待を込め電源を入れてみるも、無機質な光を放った画面はパスワード入力を要求するのみ、当然このゲームのセキュリティに詳しい人間などここにはいない。肩を落としたのも束の間、まずはパスワードを探しましょうと口を開く前に、つい先程解読のため食い入るように見つめていた謎の暗号が脳裏を過ぎった。「ケイジさん、もしかするとこのパスワードって」即座に片手に握り締めていた紙切れと端末の画面を交互に見比べ、一か八かそこに記された数字をひとつずつ入力していき──なんと呆気なくタブレットのロックは解除されてしまった。流石は現役高校生と言ったところだろうか、ある程度慣れた手つきで端末を操作し情報を探っていると、突然パッと画面が切り替わり鮮やかな色彩で装飾されたメッセージが表示された。「なんだ、この目に悪い文字列は……やけに毒々しい色合いですね」思わず顔を顰めながら、乱雑に散りばめられたカラフルな文字を目で追う。『仲良くならないと出られない部屋』、親密度、毒ガス。──毒ガス?突如突きつけられた不穏な単語に、ほんの僅かに和らぎかけていた空気が一瞬にして張り詰めた。この悪趣味なゲームの趣旨は大方理解したが、要するにただ自分たちのペースで仲良くなれなどといった生温いものではないようだ。異議を申し立てる隙も与えず次に切り替わった画面には、皮肉にも二人の現在の親密度と思しき真っ赤なハートマークが表示される。最大の問題は、そのメーターが未だ半分にすら達していないということだろう。なんせ命がかかっているのだ。気が急いてしまうのも無理はない、おもむろに顔を上げ瞳にはある種の決意を宿し、考える間もなく口を開いた。 ) ……ケイジさん。ご存知かとは思いますが、手っ取り早く距離を縮める方法があります。──ハグです、ハグをしましょう!スキンシップで物理的に親交を深めるんです、どうですか?
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