ジェイド 2020-03-23 23:02:04 |
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(例えるならば、それは蜘蛛の巣。一見して怪物の気配も人影もない廊下は、黒薔薇屋敷の佞悪な支配者が張り巡らせた幾重にも絡まり合う糸の一筋であり、本来ならば決して独りで部屋を出るはずのない新鮮な獲物が狩場へ迷い込んだ事を無音のうちに知覚して。それも悪趣味な喜劇の一幕とでも言うべきか、貴女が角を左に曲がった先の分かれ道の右側にぽうっと青白い蝋燭の灯がひときわ大きく宿り、それは飛行場の滑走路のように遥か奥まで導くように順々に灯ってゆく。それを道標と取るか罠と取るか、聡明な少女が後者と惟んみたとてもう逃げることなど許さないとばかりに、ハッと今来た道を振り返ってもそこには帰り道はなくただ存在しなかったはずの壁が聳え立つだけ。出口のない袋小路の入り口と化したその廊下、どこから吹いたかも想像できない冷たい風がいざなうように吹き抜けてゆく。この屋敷のどこかで同じ風を感じたかもしれない死神は、果たして貴女に【独り歩きはいけないよ】と忠告しただろうかと肝を冷やすだろう。それはさておくとして、これ見よがしな青い蝋燭の道を選んでも、その正反対の道を選んでも辿り着くのは下へ下へと続く螺旋階段。もしそれを降りたのならば、まだ続きそうな螺旋の中腹で貴女は珍しくも“人間界の”とあるわらべ唄を耳にするだろう。所々、レコードの針が飛ぶように不自然に調子が外れたり不気味な抑揚に揺さぶられる歌は、薄暗い螺旋階段という場所も相まってさながらホラー映画のごとく血の気の引くような雰囲気を助長する。突如、プツリと歌が途切れた後に一拍置いて聴こえたのは若い男の苦しげな呻き声。「 ゥ……あァア………… 」次いで、金属製の何かを長く伸びた爪で引っ掻くようなキリキリとした音。もし奈落の底まで階段を降りきったのなら、少し開けた場所の奥にまるで独房のような牢獄がひとつ。きっとかなり奥行きが深いのだろう、例え檻の外から中を覗き込んだとて人影は垣間見えない、ただ先程までの唸り声はいつの間にかシンと静まり返っていて)
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お返事が遅くなってごめんなさいね、いつもながら暖かいお言葉をどうもありがとう。
最近また忙しくなってしまって、お返事の頻度はバラバラになってしまうけれど、こうして少しずつでもお話や縁が繋げられる事を改めて嬉しく思うわ。
ご指名頂いたギレルモへの導入文だけれど、如何せん癖のある文章になってしまったから違和感や返し難さがあれば遠慮なく仰って頂戴ね。
私達の間に遠慮はなし。そうでしょう?…ふふ。
もちろんお返事はいつでも良いわ。待つ時間すらも愛おしいもの。
あなたが変わらず息災で、幸せに居てくれている事を心から祈るわ。
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