ジェイド 2020-03-23 23:02:04 |
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僕は使命とか宿命とか呪いとか、そういうのに縛られるのキライなんだ。もしそいつらが僕の首に鎖を繋ごうってんなら、一目散に逃げ出したいね。――君は逃げなかったんでしょ?
(眼前の物憂げな少女と同じ、黒薔薇の呪いに縛られる番人の身でつらつらと本音を吐き。現実として黒い茨に雁字搦めにされている自分の境遇にはそれ以上触れることなく、話題の対象を貴女へとすり替えながら立ち上がり、貴女の後を追うように大きな窓へと歩み寄って「 僕はこのお屋敷が大嫌いだよ。でも偶に言うでしょ?救いのない事こそが救いなんだって 」記憶に靄がかかったように、自分がなぜ此処にいるのかは思い出せない。しかし何かに縛られている事は感覚で理解しており、貴女の隣へ並び立ち窓枠に伝うように蔓延る茨と黒薔薇をガラス越しになぞり「 君にとっての救いは人間の世界には無いのかもしれない。だからこそ選ばれたのかもね 」願わくば自分がその救いに。なんて分不相応もいいところな陳腐な願いには自嘲の笑みが吹き零れ「 ……なんて。ごめんね、知った様な口利くつもりは無かったんだけど 」救われたいのは自分なのだと自覚してしまえば、途端に高潔な貴女の隣に立つのが居たたまれなくなって。要領を得ない自分勝手な言葉の数々に貴女がどんな呆れの表情を浮かべているのか盗み見ることさえ慙愧にたえず憚られ、けれどそちらから柔和な笑みを向けられては安堵にも焦がれにも似た複雑で歪な表情のまま辛うじて口角は持ち上げて「 誕生日だね、知ってるよ。君たち人間にとっては良くも悪くも特別な日なんでしょ?怪物にはそういうの無いから、初めて知った時は驚いたよ。――おめでとう、エマ。 」その祝いが少女にとって呪いであることはおろか、告げられた名前さえ真実と異なることなど知り得る道理もなく、心からの善意で祝賀を告げ。おもむろに黒煙のコートの懐を探るような仕草を見せれば、手品のごとくサッと腕を引き抜きその手中には淡い緑色の花弁が中央に向かうにつれて濃く発色する瑞々しいジニアが一輪握られており「 急拵えだけど、僕からのお祝い。受け取ってもらえる? 」その花言葉に悪意などなく、口許は弧を描くが異形たる双眸の奥には揺れるような何かを携えて返答を待ち)
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