ジェイド 2020-03-23 23:02:04 |
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ふーん……精進とか努力とか、君はずいぶん頑張り屋さんなんだね。
(頬杖をつきながら食指で白い頬を一定のリズムで柔く叩きながら貴女の言葉に傾聴して。自身はクォーヴと違って食事は質より量を重視する派だが、何の苦しみも目的もなくのんべんだらりと生きている獲物よりは、眼前の異形に対しても凛と〝自分〟を保っている貴女のような人の方が食べるに値すると感じる。同じ大きさでも、スカスカの果実よりもたくさんの果肉と果汁が詰まった方が腹持ちが良いだろう。そんな打算はおくびにも出さず「 君が頑張ってること、いつかいっぱい教えてくれたら嬉しいな 」と屈託なく微笑んで見せて。自分の命の保証すらないこの状況下でここまで洗練された挨拶が出来るなんて、きっとこの子は只者じゃない。この子をそうさせる重大な秘密がある筈、その記憶さえ食べれたなら――――無意識のうちに記憶への執着心はほんの数秒でも死神の正気を奪い、不気味なほど目を瞠って貴女をじっと見つめること数瞬。美味しい、との可憐な声にハッと我に返り。「 ああ……うん、きっと吃驚しただろうね。僕も驚いたよ、ここに来るヒト達はみんな取り乱すからさ。君みたいに冷静なコは初めてだな 」人間界の飲み物ゆえに味なんて分かりっこないティーカップの中身に視線を落とし。さして飲む気も起きないそれに、白い角砂糖をひとつ摘まんでポチャリと沈め「 カラスの執事も浮遊するカップも、このお屋敷では日常なんだよ。住人も僕以外に沢山居て、――みんな君に興味がある筈だ 」淡々とした、それでいてどこかメランコリックな視線は依然としてカップに注がれたまま。もうひとつ、今度は茶色の角砂糖を沈め「 ここは黒薔薇の呪いに支配されたお屋敷。僕も君も、一生ここから出られない。君は僕達の為に用意された……ゴハン、なんだよ。 」ポチャン。3つ目の正方形が紅茶の海に沈み、マドラーでかき混ぜなければ完全に溶ける筈もなくただ苦しむように角だけが少しずつ溶け丸みを帯びていき。そっと上目だけを貴女へ向けて「 ……理解、できる? 」とおずおず問い掛けて)
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