裏稼業のお兄さん 2020-03-23 22:38:12 |
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( この日は偶々帰りが遅くなってしまった、茜色の空の下を歩くのを怖いと思わない程度には平和に生きてきたのだと実感をせざる得なかった。普段よりも遅い帰路だったから少しでも早く帰らなければと焦りを抱く素行の良さが仇となったか、一本道を逸れれば早く帰れるだろうと通りを抜けたら文字通り世界が変わった気がした。一本道が変わっただけでシンと静まり返ったのはきっと気のせいではないのだろう。静まり返っているからこそ誰かの喋り声がよぅく響いて聞こえて、そこに小匙程度の好奇心がふつりと浮かび上がってしまったのが運の尽き。好奇心は猫をもころすとはよく言ったもの、近づいて聞こえた話は絵空事の様なドラマ的で非現実的な内容だった。近づいた時に立ててしまった音が原因か、明らかに自分を示す発言にゴクリと生唾を飲み込むこととなる。人攫い?誘拐?何方にしてもあどけない声を持つ子供が今まさに闇に消されようとしている、好奇心をも上回る偽善にも近い正義感が言葉に変わる「────この人でなし!子供を騙して何処に連れてくっていうのさ」風を切るようにハキハキと発言された非難の言葉は言い終えてから状況の悪さを自覚することとなり、ざり、と情けなくも後退り。視線を泳がすようにうろうろと動かせば他ならない”お兄さん”とやらの姿の確認だってろくに出来ず、────ただ、揺れる様な長い髪だけが目にやきついていて。 )
な、───ぁんて、……見てない!なんて誤魔化しは利かない、よねぇ
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