司書 2020-03-22 13:34:22 |
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>>1358 ノア
子どもの頃、友達同士で映画だとか漫画だとか、流行りもんが話題になったもんだろ。──どう思う?これが"普通"かどうか。
(目の前の司書が、そういうものに触れずに育ってきたのは何となく察しがつくが、そこまで触れないでくるのも珍しい。王宮育ちの自分ですら、周りで流行り物の話をよく耳にしたものだ。頬に添えられた手が戸惑いがちに撫でるのを感じながら、怖がらせないようにそっと顔を寄せると、相手のビターチョコレートの目を覗き込むように見つめて低く笑う。間近で揺れる睫毛の動きを眺めながら、ゆるりと瞬いた。「帰さないと」なんて大人ぶる相手に苦笑にも似た吐息をひとつ、独り言のように静かに呟いた。何かあったかと気にかけられるようなタマじゃない。王宮の役人も世話人もいないここでは随分と懐かしい響きだった。相手の心配そうな顔に、不要だと答える代わりに彼女の手のひらに頬を押し付けると、彼女の手の甲に三つ編みが落ちるのを視界の端に捉えフッと笑い、手首から滑り落ちるように指を離して)
俺を心配するやつなんざ、いねぇよ。インクの匂いは構わねぇと言ったろ。
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