司書 2020-03-22 13:34:22 |
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お前にとっては難しいんだろうな――ああ、考えておく。
(こちらに物言いたげな彼女に、フッと目を伏せて。お優しいことに更に対価をくれるらしく、カラスから徴収するのはアリかもなと横目で見ながら返事をしたとき、彼女の体がゆっくりと傾いてゆく。砂糖菓子が溶けるような儚い口調から、彼女がシンデレラから眠りの姫になったことを察して。それでも自分に楽しかったと健気に伝えてくる彼女に、柔らかな吐息を漏らして。邪魔しないように黙っていれば、やがて聞こえてきたのは規則的な呼吸音。体の線の細さから、到底歩き回って平気な体力があるとは思えない。とはいえ、あれだけ自分が警告しておいた上でのこの行動に警戒心がなさすぎるとため息をつけばいいのか、信用されていると喜べばいいのか複雑だ。息を吐いて、浅く目を開ける。音もなくポケットからスマホを取り出せば、カメラを起動し静かに角度を調整する。寝顔を撮るなんて子供じみたことだとは分かっているが、獰猛な獅子の隣で無防備に眠る子猫が悪いのだ。シャッター音を消し、無音のまま一枚──画面を確認し、すっかり寝入っている彼女の無防備な顔に、間抜け面。と、フッと目を細めて)
──これは今日の対価ってことにしておいてやるか。
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