司書 2020-03-22 13:34:22 |
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>>1242 ノア
お褒めに預かり光栄だな。
(彼女の瞳がこちらに向けられた瞬間、思わず一瞬だけ虚をつかれたように目を瞬かせた。魔法が使えるとはいえ彼女の思考を完全に読み取れるわけではない。その欲望をよく読み取ろうとして再びテーブルへと体を預けた。どこか期待と興味を孕んだその視線には、民衆が兄に向ける憧憬に似たものがあった。いや、それ以上に純粋で、より力強い一等星のような煌めきを感じる。そう思った瞬間、目を逸らすことができなくなっている自分に気がついた。その目を自分に向ける者は少ない。眩しそうに目を細め、しばらく考え込むように視線を落としたあと、わずかに表情を和らげる。どこか半分冗談めかした口調で言いながら、今度はマジックではなく本来の目的で――フォークを手に取り彼女が食べ終わった皿に目を落とし、残っているタルトの一欠片を仕留めた。フルーツの酸味と甘み、サックリと焼き上げられたタルト生地もほのかに甘く、フルーツを支えるホワイトカスタードクリームの滑らかさがそのふたつをより引き立ている。上品な甘さが口の中に広がる瞬間、ふと満足気に口角を上げた。自分がケーキに舌鼓を打っている間に目の前の彼女はプリプリと苦言を呈し、ヒートアップしてゆく。彼女の反応を楽しむかのようにしげしげと見ながら一通り彼女の言い分を聞き終えたところで、紅茶を1口含み余裕たっぷりといった態度のまま口を開く。可愛らしいだとかなんだとか自分のことを褒めていただいたのはすんなり受け取る。何せ蝶よ花よと自己肯定感爆上がりに育てられたので。――……王族の自分が欲しがるものは少ない。恐らく世界の中でもかなり無関心な方だろう。しかも相手個人に求めるものなど、かなり限られてくることだ。大袈裟にやれやれと肩を竦めながら、意地悪そうに微笑んで告げた言葉。最後に軽く目を細めながら、彼女の反応を伺うようにじっと見つめて)
大胆なお誘いだな、お姫様。俺の尻尾に巻き取られたくて、それからお前が欲しいと言ってほしいだなんて――お姫様が裸足のまま舞踏会に参加するってんなら、考えてやらなくもない。
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