司書 2020-03-22 13:34:22 |
|
通報 |
>>1238 ノア
クク……今は言及しないでおいてやるよ。
(感情を押し込めたような不服そうな顔を隠さない相手に、喉の奥でクツクツと笑う。おどけた言葉を返してくるかと思ったのに、拗ねたようなその態度が彼女が嫌う子猫を彷彿とさせるのだ。ケーキを食べれば直ぐに機嫌がなおるところが特に。それだけ自分の発言が効いている証拠だと思うと笑みも深くなるというものだろう。ケーキを幸せそうに頬張る彼女に、食わせ甲斐が有るなとフッと吐息を漏らすと、再び紅茶に口をつけた。ケーキを堪能していたはずの彼女の視線が忙しなくなったことになんだと眺めていれば、どうやら自分のフォークを探していたらしい。テーブルから自分へと視線が向けられる前に、少し身を引いて体で隠していたフォークをソーサーにティーカップを戻す動作と共に手にして。体重を後ろへと移動させながら再び椅子の背もたれへと体を倒す。その時腕の影からフォークを取り出せば、何も無い空間からフォークが出てきたかのように相手からは見えるだろう。ミスディレクションを利用した初歩的な手品だ。昔広場で見習いマジシャンがやっていたものをチラッと見ただけなので再現性に欠けるだろうが。この場に食器で遊ぼうが叱るお目付け役もいない。簡単にできたな。と片方の眉をわずかに上げると、余裕たっぷりの視線を向ける。手の中にある未使用の銀のフォークを指で挟み、猫じゃらしよろしく揺らした)
――ほら、ここだ。俺の国では祭りごとになると遠方から稼ぎに来るやつもいてな。こういう手品を見たことがある。
| トピック検索 |