司書 2020-03-22 13:34:22 |
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>>1198 ノア
お姫様抱っこが死因とは、大人のレディとして格好がつかないな。
(体の傷はいつか治る。自分の目元の傷のように。だが心の傷は――いつか自分の心に黒いシミが現れたあの日の苦い記憶が過る。口に広がる苦みを無理矢理押し込めるように、膝裏に添えた手に力を込めた。想像通り、軽い彼女の体は、簡単に自分の腕の中に収まった。抵抗するどころか、逆にこちらに手を伸ばしてくる相手。その細い指が自分の目元に触れると、反射的に片目を閉じた。少し冷たい温度がじんわりとこちらの熱を奪ってゆく。彼女の軽口に鼻で笑いながら応じていると、古傷がなぞるように指先が頬から顎へと滑り、そっと寄せられる手のひらにスルリと一度だけ顔を寄せるとすぐに首を逆方向へと傾けた。どこか慈しむような相手の穏やかな表情に、怪訝そうにグルルと低く唸る。相手からは本当の王子様のようにでも見えているのだろうか。どこかくすぐったい居心地の悪さを覚えながら、ため息をひとつ。この街に行くくらいでガミガミとうるさかったカラス――学園長の小言も面倒だったが、顔を真っ赤にしてブチギレて首をはねようと躍起になるであろうガキと、弱みを嗅ぎ回っている胡散臭い眼鏡など……彼女を大事にしてそうな奴らのことを考えたらキリがない。更に頭が痛くなりそうだと考えるのをやめ、彼女を抱えたまま服屋のオーナーに教えてもらったカフェへと歩を進めることにして)
相変わらずおめでたい頭だな。……そうしろ。俺の縄張りで争い事を起こされちゃ、お前の保護者たちにまたガミガミ言われる。
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