匿名 2020-03-04 15:32:18 |
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(しんと静まり返ったダイニングルームにふとジャックの声が響く。その声、言葉は相手の幼い見た目とは裏腹に力強く覚悟のこもったものであった。妹はまたそろそろと手を動かす。握りしめた手から腕へと伝い、腕から肩、そして辿り着いたのはジャックの頬。さわさわと頬を撫でると「お願いね、ジャックちゃん。兄さんも、ジャックちゃんに無理させちゃダメだよ?」と、そこに浮かべられているであろう笑顔を思い浮かべながらそう告げて。先ほど出会ったばかりなのに、どうしてこうも力を貸してくれるのか。過ぎるほどに無邪気に献身的な相手に鼻の奥が熱くなり、視界が滲んで。こちらに満面の笑顔を向けてくれば、瞳ににじむ涙を気づかれないようにこちらも微笑み返してわしゃわしゃと頭を撫でて。こちらの言葉を合図に母はシチューを取りにキッチンへと向かった。すぐにシチューの香りがダイニングルームにも漂い、まだかまだかと待ちきれない様子のあいてを宥めていると「まるで幼いころの遊馬と茉莉花みたいだな。」と微笑ましそうに父が呟いて。)
溶かせるものなら、
(相手の声と言葉を聞いていると本当に溶かされてしまいそうだ。人を誑かして玩具にしようとする相手の性格上、余計にたちが悪い。マスターらしくあらんとするために、こちらのペースを握るために放った相手を試すような物言いものらりくらりとかわすばかりでこれでは相手の手綱を握るには本当に骨が折れそうだと先が思いやられながら最後に精いっぱいの強がりを放って。遅れたタイミングで現れた鬼にピリリとした空気がリビングに漂った。日本に住む者ならだれでも知っているだろう鬼という妖怪が目の前に現れたのだから無理もない。やがて運ばれてきたシチューをジャックの要望通り「あーん」と食べさせてあげていると飄々とした顔で爆弾を投下され。先ほどのピリリとした空気がさらに強まった様な気がして、突然の発言過ぎてシチューをすくおうとしたスプーンを「カターン」と滑り落してしまい。「と、とても個性的な英霊を呼び寄せてしまったな…。」と、平静を装いながらも顔を引きつらせる父。「あらあら、二人目の孫ももうすぐかしらね。」と、シチューを配膳しながら、まだおっとりとしたペースを乱さない母。「に、兄さん!?一体何をしたの!?」と、「おかあさん」に「新妻」。耳が拾う突飛な情報にさすがに頭がパンクしたのか、目の焦点が合ってなくても取り乱す妹。そして自分はというと「ち…っ、違う、これは酒呑が勝手に…!」とさすがに平静を保っていられなかったらしく顔を赤らめながら急いで否定して。)
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