2020-02-25 07:21:09 |
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ッ、何だよいきなり、何のつも、り──…
( 唇に触れた細い指が離れていけば、意味を図りかねるその言葉に怪訝気に表情を歪めて困惑を顕に。語気強めに放った問いかけは、彼女の雰囲気が一瞬にして変わったことで弱々しく尻すぼみに途絶え。少しの静寂の後、その口から発されたフレーズは身に覚えのありすぎるもので、まさか、まさかそんな筈は無い筈だと思い込もうにも、止まることなく続けられる彼女の台詞は一言一句違わず自身が書いた脚本の中身であるのだから、最早疑いようもない。たった一度、僅か数秒程度ノートの中身を覗き見ただけというのに、目の前の女はそこに書いてあったものを余さず暗記してみせたというのだ。それだけでも並の人間に為せる業ではないというのに、複数人の登場人物を見事に演じ分けてみせる上に、自然な流れからのアドリブ、そして小手先だけのテクニックではない洗練された本物の演技力。白いスクリーンを背にたった一人で舞台を作り上げていくその姿は、まるで映画から飛び出してきたヒロインのようで、目を、心を引き付けて離さない。──ナタリア・アルフレッド。彼女がサングラスを外した時、フルネームを名乗った時、何故気づかなかったのだろう。近頃知名度を上げてきている若手女優の一人、あのナタリアが今、自分の前で自分の書いた物語を演じている。信じ難い事実に頭がクラクラするというのに、気づけば椅子の下に脱いだ靴を履くのも忘れ、その場に立ち上がって彼女の演技に見蕩れており。やがてその動きが止まればパチンと魔法が弾け消えるように現実に引き戻され、脚の力が抜けて半ば尻もちをつくような形で再び着席。極めつけに戻って来た彼女から自分でも有り得ないと思うほどの賛辞まで受けてしまえば、要求通りノートを渡す以外の選択肢は無くなり、ゆっくりとそれを差し出して )
……ロマンスものなんだ。金も地位もない男が富裕層の美しい女に叶わない恋をする、…さっきのは二人が初めて顔を合わせるシーンで……、その、女の台詞をどうするか悩んでた。
(/ご快諾いただき安心いたしました…!話の流れも大変ステキです!ノートを見せるまでに一悶着あるかなと踏んでいたのですが、まさかここで演技を入れて下さるとは思わず、不意打ちに素でドキドキしてしまいました!ときめきすぎてノートもあっさり渡しちゃいました(笑) ロルについてお優しいお言葉をありがとうございます。今回はストーリー上でも特に大事なシーンなのかなと思ったので、あまり描写を削りたくなく上限目安の字数を突破してしまったのですが、次回からは文章量も情報量も少し抑えていきたいと思っておりますので、どうか此度だけお許しください…。
また、ロル上に描けていませんが今回の流れでニックは既にナタリーさんに惚れてしまっている想定です。ただ自分自身ではそれに気づかないまま、今後の展開で逆にナタリーさんの方が自分のことを好きなんじゃないかと勘違いしていく、という流れにしたいと考えておりました。この辺りは問題ないでしょうか?)
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