△ 2020-02-03 14:03:20 |
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蒸気と魔法がまだ存在する世界。
大陸を半分以上制する大きな国。
西洋東洋入り交じりの、少しあべこべな大きな街。
人も獣も、妖精さえも等しく暮らすこの国は活気も喧騒も、静寂さえも生きるのに必要なものだった。
街の西側の、閑静な少し小高い丘の上にある小さすぎるとも大きすぎるともしない教会がひとつ。
毎朝日の出と共に1人だけの“シスター”は掃除とお恵みを求めてやってくる人々へ食べ物を配り、お祈りをし訪れる人々へ聖書を読み聞かせ
慎ましくもちょっとばかり忙しい日々を送っていた。
ある夕暮れ。
西日がステンドグラスを反射しキラキラと教会の中を照らしだし幻想的なその時間帯。
庭の掃除を終え戻ったシスターの目に
あるものが映りこんだ。
誰も居らず、聖堂の奥、中央に鎮座する十字架
の前に倒れるようにしてうつ伏せになっている
男───
漆黒に染まったロングコートを見に纏い背中には大きく切り裂かれた傷痕。
髪も黒く、肌はあまり健康的とは違う白さ。
鼻筋の通った、異様に整った顔立ちはどこか魅了されるものであった。
『あの───、』
心配になり声をかけたその時、
視界が大きく揺れる。
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羽を堕とされた“悪魔”
神使忠実な“シスター”
天使や悪魔でさえ存在する国。
しかし悪魔はどの世界でも悪者。
ある理由をきっかけに羽を堕とされ、地へと堕ちてきた悪魔。
悪魔だと正体を知らずに助け、看病にあたり、教会へと住まわすことを決めたシスター。
チグハグでも周りから嘲笑われても
この少し奇妙な関係が心地よかった。
いつしか恋心に目覚めるシスターであったが街へと買い物へ一緒に赴いた際、堕ちた悪魔を討滅しようと天使が天界から遣わされ、ちょうど見つかってしまう───
悪魔だと知らなかったシスターも匿っていたと思われ危険な目に。
一時的に難は逃れたものの、悪魔だと分かり少しばかり気まずくなってしまう事に。
護りたいもの。人。
叶わぬ願いだとしても
最期までその笑顔を護り、見ていたい。
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