○ 2020-01-07 09:44:52 |
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……はっ、…?
( 自分には感じられない聖者の匂いにケチを付け、悪魔びた不気味な笑みを浮かべる彼を、訝しげな顔で眺めていた。少し前迄は。相変わらず口の減らない奴だ、なんて内心呟いていた先程は未だ余裕があった。今現在、目の前で起こった彼の行動に、言葉を発することも出来ずに居る。彼は、己の指示通り床に膝を着いた。其れどころか、至極丁寧に労わるように手を取り、彼の普段の素行からは想像も出来ないほどに、優しくそっと口づけを落とした。この大勢でも彼の整った顔が、綺麗な髪がよく分かる。あまりに己の想像を逸した光景に、言葉を返す事も瞬きすらも忘れては切れの目を大きく見開いて。一瞬、己の時が止まり冷えた空気の感覚すらも失った。だが理解が追い付くより先に、身体は反射的に目の前の自分に害を及ぼす「悪魔」と距離を置こうと一歩足を引く。が、其れが叶わず体が動かぬ事を不思議に思った時に初めて、腕を捕われている事に気が付いて。「あ…貴方、一体此れは…何のつもりですか?…私は……」やられた。そう理解した時にはもう遅く、普段の己とは不釣り合いな程に上擦り驚嘆の滲む声でそう返し。不味い、このままでは完全に彼のペースに呑まれてしまう。早い所己のペースを取り戻さねば、遣られっぱなしも癪であると小さく首を振り。「…私は、大天使としての威厳を損なう訳にはいかないのですよ、気遣い無用。…もう結構ですよ、寧ろ今は最早貴方の顔も見たくない位です」彼の言う事に、耳を貸してはならない。何故なら己は大天使であり、悪魔に心を揺さぶられる事は愚か関わりを持つ事すら本来許されぬ事。上手く回らぬ頭で、絞り出すように一方的に理不尽な返答をしては、彼の束縛から解放されようと彼を起こし立たせる為にぐい、と彼の手を引いて)
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