主 2019-12-11 01:03:56 |
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>宝城先輩
…。
(彼女をから視線を逸らしていても声の震えで泣いている顔を脳裏に浮かべるのはさして難しい事ではなかった。舌の根も乾かない内にまた彼女を泣かせるだろう事は分かっていたはずなのに、それでも自分の不甲斐なさに嫌気が差した。彼女が紡ぐ震えた細声は聞き取り辛くて、もう言い逃げと捉えられてもいいと思った。その笑顔をこれ以上崩す方が辛かったし、元より自分が他人と関わる事に向いていない事は芹華自身分かって居たのだから、今更何が変わる訳ではない。「私、もうーーー…っ」お暇しますね、と続けようとしていた言葉は喉奥で溶けて消えた。ふいに仰ぎ見たその視界の先で彼女が涙を流しても尚柔らかく微笑んでいたものだから、目を奪われてしまったのだ。弱々しく、それでも確かに芹華の耳に届いた彼女からの感謝の言葉に必死に頭を振った。それは自分に向けられて然るべき言葉だとはどうしても思えなくて。「ただのエゴです。独善的な、押しつけです。ごめんなさい。」低い声でそう告げながら今度は自分の目頭に熱が篭るのを感じればぎゅっと目を瞑ってそれを抑え込んで。)
>誠
ふふ、冗談ですよ。きっと海原くんはそんな事しませんし
(自分でも意地の悪い冗談だとは思ったが、それでも彼はケラケラと笑いながら返してくれる相手は芹華にとっては心地良くてそんな彼が自分と相対する可能性などかけら程も無いと、そう思ったから差し出されたそれ拒否する理由もなく、ただ“友達ってこうするものなんですかね…”と友達の殆どいないと言っても過言でない芹華はどこかずれた事を思いながら彼の節張った男らしい手を握れば、血の通った掌はこの季節には暖かくて、友達という存在も決して悪いものではないのかもしれない。「うん…よろしくお願いします、海原くーーー……誠。」親しげに下の名前を呼ばれて、それに相応しい返しはきっと、とふいに出た呼び方を自分も言い改めれば先程の彼の冗談を思い出してまたくすりと笑みを溢し。)
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