ハッカ 2019-11-24 01:36:30 |
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隣、いい?
(髪を切ったから、もしかしたら気付かないかもしれない。なんて、一抹の不安を感じながらカウンター席に座る男へ声を掛けた。許可を求められた男は狼の様な黄色い瞳で此方を一瞥すると、好きにしろと言いたげに素っ気ない瞳を前方に戻す。生憎と愛想のないその動作だけでは、彼が私を憶えているのか将又忘れているのか判別は付かなかった。仕方がないのでヒントを与えることにしよう。「コーヒーをお願い。砂糖とミルクも、沢山いただける?」クッションが硬い丸椅子に腰を下ろしながらいつもの様に注文する。私の口がすっかり形を覚えているように、彼の耳にもその言葉は難なく馴染んだらしい。ソーサーとカップがぶつかって細やかな音が上がったにもかかわらず、満月を彷彿とさせる双眸は満足気に微笑む私を映しこんでいた。間を空けずして伸びてきた手がすっかり短くなった毛先を摘まむ、その動作を見つめながら次に発するべき言葉を頭の中で軽く探してみても碌な言葉が浮かばなくて。開いては閉じを繰り返すさまを見兼ねたのか、私が幾つ目かの言葉を飲み込んだ其の直後に彼は口を開き___似合っている。無愛想な声でそれだけを言って髪から手を放して、さっさと服の裾を翻して店から出て行ってしまった。ぴんと伸びた姿勢の良い背中が紺色に溶けていくのを呆気に取られつつ見送ると、運ばれてきたコーヒーに砂糖とミルクをたっぷり入れながら、ついさっきまで見つめ合っていたアンバーの両目に思いを馳せる。静かで優しい夜だった。)
>Aのお話は「髪を切ったから、もしかしたら気付かないかもしれない」で始まり「静かで優しい夜だった」で終わります。
( #こんなお話いかがですか 様より拝借 )
ぐだぐだ書いてたら着地点もコンセプトもシチュエーションも不明になっちゃった…
アンバー色の目に狼の目っていう通称があるの大好きです
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