ハッカ 2019-11-24 01:36:30 |
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(もう直ぐ夜が明ける。あんなにも暗い色を帯びていた夜の空は直に姿を消し、薄暗い早朝が国の全てを包み込んでいくだろう。明日の空は青く澄み渡り、一年で最も晴れた日になるでしょう。と王室抱えの占い師による吉報を思い出しながらふと隣を見遣れば、ベッドの淵へ腰かけた最愛の人は微睡に片足を引き摺り込まれている様だった。頭が落ちた衝撃でひとたびは覚醒するも、やがて再びこくりこくりと舟を漕ぎ始め、そしてまた落差で目を覚ましている。妙な部分で頑固な恋人のことだ。共に夜明けを過ごしたいと自ら申し出た以上先に眠るまいとしているのだろうが、その葛藤がいじらしく、そのいじらしさがまた愛おしい。見っとも無く緩んだ頬も今日この時ばかりは締める事もせずに、夜更け前から繋いだままの手を少しばかり此方側に引いてやると、大した抵抗もない内に柔らかな誘導に乗った頭がぽすんと寄り掛かった。このまま体勢を変えずにいれば、左程待たずして穏やかな寝息が冷やかな寝室の空気に溶けていくことだろう。無理に意識を起こすほど入眠を拒否していた人間に対しては酷い仕打ちかもしれないが、既に幾らか夢を見始めている赤薔薇の君が非難を紡ぐことは無い。微塵の不安も感じていない安心しきった寝顔に、人知れず安堵の吐息をもらした。呼吸に合わせて上下する薄明りに照らされた頬と其処に落ちる睫毛の影が、物音一つ立たない冬の部屋で生きている人間の証拠たらしめる。生命活動を止めて仕舞えば忽ち輪郭を失い、瞬き一つで煙の様に消えてゆく、そう確信させるほどの儚さに包まれて眠る存在にキスを一つ贈り。其れが擽ったそうに身を捩ったのを見届けてると、二人で過ごした最後の夜を噛み締めながら、窓硝子を越えて差し込む薄紫の光を瞼の裏に閉じ込めた。)
>Aの場合:眠そうな相手の腕を引いて自分の方へ寄っ掛からせたとき、まつげの影を愛しそうに見つめました。
( #ほのぼのなふたりの甘い日々 様より拝借 )
表のお題トピに投稿したかったけど適切なお題が見当たらなかったのでここに
性別を明記しない練習、ほのぼのお題なのに最後不穏でごめんなさい
あとたらしめるの使い方間違ってね?難しいね、たらしめる
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