□ 2019-11-22 20:38:24 |
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本当に?まあ、お前が大丈夫って言うなら俺は信じるからね。
(大丈夫だと普段通りの表情と声で言われ一応安心はしたものの、胸の底には払拭しきれない不安がこびりついている。だが、妹の言葉を信じようと妹に向けたような言葉はその実、自身に向けたものでもある。外に誘うと、まだ白い雪が残る中に飛び出して行った彼女の後を自らも駆け足で追いかける。一歩外に出れば空気はぴりりと冷たく、顔を洗わずともほんの少しだが目が覚めるほどだ。光に反射してキラキラと輝く雪に目を細めていると、後ろから両目を抑えた妹に突撃をされ「うぐぅっ……」と変な声を漏らして背中を擦る。雪はこんなにも綺麗だったかと、あの日の雪をぼんやりとした頭の中に思い起こすが、思い出しても楽しくないことに思い当たりそっと考えの隅へと追いやる。井戸で顔を洗う妹を見つめながら、寝癖の付いた髪を手櫛でとかして井戸の順番を待つ。暫くして顔を洗い終わった彼女が何かを見つけたようにそこを退くと、今度は自分が顔を洗い始める。思った以上に冷たかった水に驚いて束の間手を止めたものの、再びびしゃびしゃと顔に水をかけていると、そこに妹の楽しげな声が自分に話しかけていることに気がつく。顔を洗うのを止め、そちらに目をやると可愛らしい兎と目を見合わせている彼女に「お前みたいに綺麗な白い毛と赤い瞳だね。まるでお揃いだ」と笑いながら返事を返し顔を袖で拭いながら一人と一匹に近付いていく。)
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