碧棺左馬刻 2019-11-14 07:21:36 |
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(/いえいえ、こちらも楽しませて頂きました。左馬刻様の口の悪さは心得ております故、ご心配なさらないでくださいませ。遅くなりましたが、改めまして、よろしくお願い致します。それでは、当方もこれにて失礼致します。)
(得意先との商談を漸く終え建物から出てみれば辺りはすっかり暗くなっていた。社内用携帯で上司に直帰する旨を伝えて電話を切る。深い溜息を一つ零しては、半ば体を引き摺るようにして駅へと足を進め。歓楽街を通っていたつもりがどこをどう間違えたのか気付いた時には景色は一変し目に映るのは人気の無い裏通り。考え事をしながら歩いていたのが不味かったかと反省しつつ現在地をアプリで確認しようとスマートフォンを手にしたその時、そう遠くはないところから物音が響いてきた。この時ばかりは恐怖心よりも好奇心が勝り恐る恐る近づいていく。するとそこには自分がこの世で最も苦手とする光景が広がっていた。人が人を踏みつけたのだ。目を覆いたくなるようなこの場から一刻も早く立ち去りたいのに、体は言うことを聞いてくれずただ立ち尽くすのみ。相手に見ていることを気付かれてしまえば、自分自身も身が危ない。冷や汗がひと筋肌を伝うのを感じ、心臓は早鐘の様に鳴り響いている。青年の瞳がこちらへと向けられた。その視線は鋭くて酷く冷たいものだが、何故か逸らすことが出来ずに視線が交わってしまう。彼が口を開いたので何か答えなければと必死で考えを巡らすも、己の脳は思考することを止めてしまったらしく何一つ思い浮かばない。それならば事実のみ伝えるまでだと半ばやけくそな結論に至り「…すみません、迷子になりました」と瞳伏せがちに言うのが精一杯で。)
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