とくめい 2019-09-25 09:21:08 |
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燭台切:
そう?…でもほら、君の分を食べちゃって悪いから。
───ほら主、あーん。
( しっとりと口内に広がる甘い味わいを嚥下し、玉露を一口啜って。矢張り見た目だけでなく味も良い。後で細川の彼に礼を言わなければ。ふと目の前を見れば、頬を真っ赤に染め俯く主人の姿。健気で可愛らしいその姿にどうしようもなく胸中が疼き、自分にはないと思っていた嗜虐心が疼いて。未だ口を付けていない自らの茶菓子を小さく切り分け、同じように菓子切りで刺し。菓子にも負けない程に声色に砂糖を乗せ、金の瞳をそうっと細め。落ちてしまわないよう掌で皿を作り、彼女の前へと和菓子を差し出し。)
霖:
…ほんとうに?背中なんて向けちゃ駄目だよ?
ちゃんと向かい合って、狭いから身体寄せて、眠くなったらお休みのキ────、
( 薄っすらと、十年前の記憶が蘇る。本丸に泊まる日は祖父と寝ていたのに、彼ともっと一緒にいたくて、眠るのが惜しくて。一緒に寝たい、だなんて駄々を捏ねて、彼を困らせていた。今もそれは変わらない。こうして髪を撫でる優しい手も、突然のお願いに狼狽える彼も。そんな懐かしさに浸っていれば、ふと聞こえる訂正の声に顔を上げ。予想外の反応に表情を明るくし、稚かった頃の記憶と願望を呼び起こしながら言葉を並べ、ふいに口を噤み顔を畳へと向け。最後は完全なる幼い願望。口付けだなんて、恋人でもないのに。余りに嬉しかったからか口を衝いて出てしまったのだろう、じわりと紅潮を滲ませる頬を掌で挟み込み戒めを。)
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