とくめい 2019-09-25 09:21:08 |
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歌仙:
───…?あるじ、……主。こら、待ちたまえ。
( 戸を隔てた廊下から、つい今朝方聞いたばかりのような、芯のない弱々しい声が聞こえてくる。放り出していたままの水盤を磨き片付けていた作業を一時中断し、訝しげに忍足で引戸へと。同じく音を立てないように開け、廊下の様子をそろりと覗くと、目に入るのはどうやら項垂れた様子の主人の後ろ姿。いやに小さく見えるその背に声を掛けるも、何となく気が引け声が弱まり。仕切り直しとして一つ咳払いをし、次こそははっきりと声を掛け。つかつかとその後ろ姿へと距離を詰め、驚かさないようそっと肩に手を掛けて。)
霖:
っや、やだ、今更?私、こんなだらしない格好まで見せてるのに?
( 自分よりもずっと付き合いの長い彼の確信めいた言葉に、不思議そうに其方を見遣り。勿論、未だ想いが通じ合ってから日も浅い。甘い言葉を囁き合う暇もなかったと言えばそれまでだが、自身の中の彼の印象と、可愛い、という言葉がどうにも結びついてくれない。首を捻る最中、呈された案にばっと顔を上げ、学生時代の裾の緩んだジャージの裾を振って見せ。そも、矢張り粧し込んだところで彼の口からそんな言葉が出るだろうか。暫しの間口を閉じ考え、シミュレーションのつもりがいつの間にかあられもない妄想になっていることに気付くとじわじわと赤面し、頬を手で覆って顔を伏せ。)
い、言って、……くれるの、かなぁ。
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