とくめい 2019-09-25 09:21:08 |
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燭台切:
────駄目。悪いけど、それは聞けないよ。
( 己の平衡な態度が功を奏したのか、覆われた手がじわりじわりと退き、安堵に瞳を細め。舌の上で蕩けるマスカルポーネの味を確かめながら、細切れに紡がれる彼女の思いを一つ一つ咀嚼し。段々と怪しくなる雲行きに口を結び、何か考えるように瞬きを。違和感を覚える程に唐突に声色が明るくなり、それにつられて顔を上げ。彼女が決めたことならばと頷くことが一番良いのだろう、それは分かっている。笑みの消えた静謐な様子のまま主人の様子を眺め続け、自らの言い分を終え己が投げた問いについて考え始める彼女に水を浴びせるように、ぴしゃりと言い放ち。食器を置いて再び机に身を乗り出し、雪のように白い柔頬を両掌で包み込み、琥珀のような双眸で射るように視線を注ぎ。)
霖:
…意地悪。ずるい。膝丸のこと、もっと好きになっちゃうだけなのに。
( 肩まで軽い布団が掛かり、身体は先のことで僅かに緊張を残しつつも、午睡の状況が整いふっと息を吐き。こうして顔は見れないままだが、矢張り好いた男の腕の中で眠れるというのは女として至福。もう少し身を寄せ甘えようかと考え、側から降る愛しい声に疑問んを感じ睫毛を上げるも、真っ直ぐに刺さる彼の視線に反射的に顔を伏せ。塒のように腰に腕が巻きつき、先程望んだように身を密着させ抱き寄せられる。意地悪な彼に高鳴ってしまう胸が情けない。被虐趣味など今まで一度も感じたことはないというのに、どうして己が恋心はこうも悦んでしまうのだろう。内心で頬を膨らませ、おずおずと視線を彼の方へと。鋭い双眸が美しく、何処かがきゅんと疼き。染まった頬を隠してももう手遅れだろう。腰に添う彼の手をさらりと撫で、墨のような瞳を熱に溶かし。)
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