とくめい 2019-09-25 09:21:08 |
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歌仙:
な、何もそこまでは言っていないだろう…!
( 自身の芦のように長い小言は何も意味を成さなかったようだが、最後の呟きが一番効いたらしい。零した一言を拾い上げるや否や、前方を行く彼女の足取りがぴたりと止まって。掴んでいた手を離され疑問に首を傾けていると、此方へ振り返った彼女の表情に思わず肩を跳ねさせ。今にも崩れてしまいそうな表情はすぐにでも泣き出してしまいそうで、まるで幼い子供のようだ。往来の真ん中で女性を泣かせるのは流石に不味い。側から見れば完全に痴話喧嘩の末に相手を泣かせた男、といったところだろうか。情けないことこの上ない。慌ててその肩を掴み出来る限り優しい声色で語り掛け。)
彼がそんなことできみを嫌うはずがないよ、今まで一度だって嫌な顔をしたことがあったかい?
霖:
けっ……!?そ、それは、っ…。
( 可愛らしく狼狽するその姿に悪戯心は疼くばかり。普段はああも風格良い美丈夫だというのに、少し揶揄すればこうして泡を食ったように慌ててくれるのだからこの刀は狡い。にこにこと機嫌よく笑みを浮かべ、次はどう返そうかと考えていると、肩に置かれた手が自らの髪へと滑り、蜜の色をした瞳が迫って。形の良い唇から返された小さな意地悪に途端に頬が熱を持ち、咄嗟に出かけた否定を呑み込んで。ただの仕返しだということは分かっているが、それでもその言葉を否定するのが嫌で、自分の幼さと単純さに呆れが差す。彼のお嫁さんになりたい、だなんて幼稚な夢が、今も続いているとは彼も思うまい。悩ましげに視線を動かし一つ息を吸うと、溢れる羞恥に耐えながら思いきって呟くように返し。)
……でも、膝丸みたいな人のお嫁さんになれたら、幸せなんだろうな、って…。
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