語 2019-08-19 18:00:54 |
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>>麦
水は大丈夫。ごめん、おれも言いすぎた気がする。
( 掴んでいた彼の手首を離して自分の全身を確認する。幸いどこも濡れていない。地面に転がった如雨露を拾い上げると、すっかり空っぽになっていた。けれど、水なんてまた汲めばいいし、濡れたものは乾かせばいい。それよりも今、彼のこころのほうが心配だった。未だ気持ちが収まる様子のない相手に困惑する。花と同じように彼も生きている、それならやっぱり傷ついてほしくはない、と思う。しかしどうすれば彼のこころは治るのか、人と関わることから逃げる弱い自分には分かるはずもなく。こういうとき普通の人はなんて言うんだろう。健気に咲く花を見つめながらうんうんと悩んだ果てに、なけなしの語彙から言葉をひとつずつ慎重に選び出して )
えっと、なにか …… 辛いこととか、そういうのがあるなら、おれに話してもいいんだけど
>>一華
か、かわいい? …… ん
( 彼女から飛び出た突飛な言葉。それを受け止めるために復唱した声が、情けなくもひっくりかえった。かわいいって、なにが?花じゃなく此方を見て言うってことは、まさか先ほどの自分を見ていたのだろうか。どうしようもない恥ずかしさに心の中で百面相しながら、なるべく短くて可もなく不可もない応えだけを返す。けれどどこかへ逃げて隠れてしまいたくなる心は、彼女が広げて見せてくれた絵に連れ戻された。うすぺらい紙の上で咲くその花を何度も瞬きをして見つめる。ただ自分のためだけにしていたことが、誰かのためにもなっていたなんて。先程本物の花にしたのと同じように、色を塗られた花弁を指でなぞる。彼女からのありがとうは今まで言われたどんな言葉よりもあたたかい気がして、自ずと笑みと言葉が溢れ出し )
なんか、うれしいかも。ありがと
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