賢者アークエット 2019-07-16 19:33:40 |
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【 雷火の騎士アレクサンドラ / 第二要塞都市ソルブランカ- 門前 - 】
っ、ぐぁ……っ!! お、母……様っ……!
( 相討ち、または重症を負わせようと自身の体を対価にした反撃もどうやら防がれてしまったようだ。これが幾多の戦場を駆け、生き延びてきた経験の差か。黒焦げた幹の向こう側から聞こえる声から、事態を察し。追撃とばかりに新たな蔦が出現。左足を捕らえ、逃れようとクモの巣に引っ掛かった羽虫のように全身でもがこうとするが、それがむしろ事態を悪化させ、さらに締め付けが強まり。左足の肌に鋭い刺が食い込み血が流れ、ボロボロになった緑色のスカートがそれを吸収し滲み、変色してゆく。もう一度別の蔦を燃やしても結果は同じだろう。助けて、と母を求め呼びかける声が、虚しく響く。自分は負け、母の手掛かりはまたもや得られなかった。悔しさと恋しさと苦しみと、様々な感情が渦を巻き、宙吊りのまま瞳から大粒の涙がポタポタと大地を濡らし )
( 愉快そうな魔族の声、守護騎士の団長の叱咤。それ等が鼓膜に届いても、敗北が、母探しの振り出しからの精神的衝撃により右から左へと流れてゆく。やがて時間と共に効力を失い、蔦が霧散すれば足元から地面に落下。左足の負傷から着地に失敗。左手は火傷により皮膚は爛れ、拘束されていた蔦の跡が全身に赤く刻まれ、左足にもうまく力が入らない。これ以上の戦闘の続行、オズワルドの追跡、魔族を援護する事も全て不可能だろう。その場に倒れ伏したまま、まだ意識は保っていれば浅い呼吸を繰り返し。遠ざかって行く柳緑の騎士の大きな背を、恨め気に見送り )
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