賢者アークエット 2019-07-16 19:33:40 |
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【 柳緑の騎士オズワルド / 第二要塞都市ソルブランカ- 門前 - 】
礼なんか要りませんよ、アンタに受けた恩に比べりゃ、こんなもの。
( 秘奥によって支えていた身体をマリアの元に預け、そっと木を霧散させる。実際にかかった負担は秘奥発現による魔力くらいで、自分はただ枝に彼を引っ掛けて逃げるために走っていただけである。感動の再会に水を刺すのも、と後退したのが悪かったのだろうか、黒い霧への緊張を一時的に緩めてその疲れをはあ、と呼気に乗せて吐き出した次の瞬間に、彼らの姿は掻き消えてしまっていた )
……マジかよ、なんてこった…
( 彼はマリアの弟ではなかった。だとすれば、マリアを危険に晒したのは間違いなく自分の責任だ。自分はまた、恩を仇で返したのだ。凍てつくような寒気が背をなぞった。顔をこれでもかと青くしながら精神的な負荷から上がる息を抑えつける。落ち着け、深呼吸しろ。戒めのように左手を口許に宛てがい、人間の肌には程遠い肌触りを頬に知覚させた。心を落ち着けるための少しの間を置いて、その巨体に向き直る )
( これは、一介の騎士が相手どれる魔ではないだろう。尾の一振で大地を割るなど尋常ではない。雷火の騎士が選んだと思われた交渉の手は賢明と言えたが、それはマリアを取り返すためではないようだった。ならば自分が、彼女に魔が集中している隙をついてマリアを取り返すしかない。ブーツの底から地へと根を伸ばし、マリアが囚われている場所まで巡らせようと試みた。この大地全てに根を下ろす訳ではないから、明日にまで響くことはないと思いたいが、もしなし得たなら少なくとも今日中は秘奥が使えなくなるだろう。会話が途切れないうちに、できた割れ目にかかるかかからないかくらいの位置にまで根を伸ばして )
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