見守る者 2019-07-02 21:57:31 |
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しんしんと雪が積もる
誰かの涙が、誰かの冷気によって凍り付き、
世界を一面白に染め上げる
孤独を抱え、傷と眠り
肌寒さに目を瞑る
慈悲もなくただ白いだけの雪は
それでも体温を奪って意識を刈り取り
彼らを安寧の地へ導く位はしてくれる
そうして辿り着く場所は小さな洋館
独りぼっちに苦しんだ彼らの最後の要塞
窓から見えるのは変わらない雪景色
動くものは何も無く、館内を覆うのはひっそりと吐く溜息すらも響く静けさ
共に住まうのは同類なのだから
恐れなくてもいいんだよ
威嚇しなくてもいいんだよ
さあ死の淵の目前で
手を取り合って
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天国の階段を登る前、輪廻転生の渦に入る前。一定の条件を満たした死者だけが迷い込む異次元がある。そこは昼も夜もなく、雪だけが延々と降り続けるだだっ広い雪原で、見渡す限りの銀世界には小さな洋館だけが佇立する。そこに導かれるのは孤独に涙し死んでいった者たちだけで、そうする事が恰も正解であるように皆洋館へ足を踏み入れる。外と同じくしんとした静けさに浸った館内では、同じ苦しみに喘いだ者が寝食を共にする。同類とどう接するのかは、死者達の心のままに。そうして此処での生活で全てに満足を得たならば、天国へ、輪廻へ、一歩踏み出す事もまた自由。入ってきた扉を再度開くその時は、生まれ変わりの瞬間だ。
『お話はまだ終わらないから、お静かに』
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