匿名さん 2019-05-04 12:37:46 |
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…は、ははッ、そうだったのか。お前、兄貴のこと__。
(訊かなければ良かった、と後悔の念に蝕まれる。しかし相手が話してくれなければ相手の中で燻る想いは熾火のように熱を持ち続けたことだろう。自分の兄に対して親友という枠を超えた特別な感情を持っている相手の一面を知り沸々と滾るのは怒りにも似た激しい嫉妬と独占願望で、その情動を抑え込むかのように空笑いを零しては口元を歪め、嘲るような声音で呟きを吐く。胸中に渦巻く遣り場のない激昂に駆られ眼光を烱々とさせ相手の胸倉を掴むも、此処で相手にぶつけるのは違う、と冷静な思考が頭を掠めれば大きな溜息を吐き出したのち掴んでいた衣服をゆるゆると手放して。静かに視線を伏せては、もしや自分に兄の面影を重ねていた瞬間が何度もあったんだろうか、と虚しい想像が心に浮かぶ。相手の口から紡がれた"小さな王子様"という言葉や時折赤く染まる頬を見て、弟のような存在から恋の対象へ進展できたと思っていたのは勘違いだったのか。そんなことを考えていた折、ふわりと抱き寄せられれば忽ち切なさで満たされる。そして震える声で語られる言葉が鼓膜に響いては、相手の好意を信じて良いのだと、なんとなくそう思えてきて。相手からの問い掛けにフッと笑みを零せば「__ホントにな。これから楽しいデートだっつーのに辛気臭い顔しやがって」と茶化すような口振りで文句を垂れつつ暗に乗り気であることを告げ、相手の後頭部に手を回し軽く引き寄せては耳の縁に唇が触れるくらい顔を近づけ「兄貴のことなんて一日で忘れさせてやるよ」と低く甘ったるい声で囁いたのちパッと身体を離して、まるで何事も無かったかのように平然としながらシートベルトを締めて出発を促し)
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