匿名さん 2019-05-04 12:37:46 |
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まぁ、ほんの一度きりだったけどな。ずっとお前の声を聴いてたくて粘ってた。…でも、そんとき以外は丸っきしダメだったわ。お前の読み方が上手いせいかすぐ眠たくなる。
(相手の読み聞かせは情感豊かながらも抑揚の柔らかな語り口で、物語が中盤に差し掛かる頃には既に眠気に襲われて瞼が重くなっていたのが殆どだったことを思い出す。"一度きり"のあのときは恐らく相手は学業か外遊びで疲れていたのだろう。相手に対して抱いているのが恋慕なのか親愛なのかまだ判別が付かなかった頃、本を開いたまま瞳を閉ざした相手の寝顔を覗き見て子供ながらに心がざわざわと騒ついてしょうがなかったことを思い出しては、好きだという気持ちがこんなに加速して行くとは思ってなかった、なんて一つ吐息を零して。ふと本棚に視線を移しては人魚姫の絵本が目に付き、相手へ視線を戻せば『ガキの頃、敬人はセイレーンの子孫か何かなんじゃないかと思ってた』と子供特有のファンタジーな空想を回顧するも、言葉にすることなく胸の中に仕舞っておき。此方からのアプローチにより真ん丸に見開かれた瞳と視線が重なれば逸らすことなく無言でジッと相手の反応を窺う。僅かながらも頬が赤く染まる様子を目にすればもしかしてワンチャンあるんじゃないか?と勝手に都合の良い方に捉えて。暫しの間が置かれたのち紡がれた相手の言葉を聞いては「ゲッ、此処そんなに値が張るとこなのかよ。…なら学力テストで学年トップになったときにでも、ご褒美にまた連れて来てくれよ」と年相応の人懐っこい笑みを浮かべて見せ。しかし指をするすると撫でられれば自分から仕掛けたにも拘らず落ち着かない心地になり、その指を緩く握り捕まえては「会社の飲み会とか、酔った勢いで触らせたりとかあったりすんの?…こんなことされたら多分、勘違いすると思うぞ」と内心独占欲を燃やしながらも淡々とした声音で問い掛けて)
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