恋は時々、痛いけど。/ 一対一

あ"ー……フツーに嬉しいのに素直に喜べねぇ。アイツの起こし方は起こすってより寝起きドッキリじゃねぇか。それに比べりゃ優しいだろうな。
(相手から頼られるのは嬉しいものの比較対象に兄を持ち出されれば複雑な心境になり盛大に眉を顰めて見せる。相手ほどの頻度では無いだろうと思いつつも乱雑な起こし方をされた記憶を振り返っては頭に浮かんだ映像の数々を打ち消すように緩く頭を振って。しかし相手の指差す先にある紙袋へ視線を向ければ幾分か表情を和らげ「…ん、伝えとく。お袋も敬人に会いたがってたからめちゃくちゃ喜ぶと思う」と頷き返して。自分の腕の中で恥じらい葛藤している相手の姿をただ眺めているだけで幸福感に満たされ、一瞬たりとも見逃せないと言わんばかり記憶に深く刻み込むように相手を見据える。そして顔を覆っていた両手が下されれば潤んだ瞳と視線が重なり、ドクリと大きく心臓が跳ね。「100点満点…」束の間見えた相手の表情に見惚れて心の内に秘めておくはずの言葉がぽつりと口を衝いて出てしまい、それを誤魔化すように ん"ん、と軽く咳払いをしてはゆっくり相手の身体を下ろして。ついでにくしゃくしゃと相手の髪を撫でれば「俺以外の前でそーゆう顔すんじゃねぇぞ」と囁いたのち洗面所に相手を残して部屋に戻り)