届かないほど、近くの君へ/〆

あぁ、センちゃんか。あの子人懐っこいからなー。
(隣の家の犬といえばあのラブラドールのことだろう。家の前を通るたびに潤んだ瞳を向けてくるものだからつい構ってしまう。そのおかげでなつくまでには時間がかからず、ある日構っているとラブラドールの主人と出くわして教えてもらった犬の名前を出して。今朝も二人でその家の前を通るとかまってほしそうなセンが庭の奥から尻尾を振りながら出てきて、その様子を笑いながら問いかけてくるとこちらも笑みを返し、しゃがみこんでセンの頭を一撫ですると「ごめんな、今日はもう時間がないからまた今度な」と言って学校へと向かい。学校が近づくにつれ先程までの何気ない会話が少なくなってくる。やはり相手にとっては学校という場所は気が滅入るのだろう。数秒の無言から絞り出された言葉は何気ない一言だが重みのある言葉。その意図がどんなものかわからず「そうだな」とだけ返す。しかし、何かを思い出すようにカバンの中から何かを出すとこちらから離れていく相手を呼び止め「しーちゃん、これ」と相手に弁当箱を渡し「今日の分渡すの忘れてた」と毎日母親が自分の分と合わせて相手の分も作っているのに忘れていたと申し訳なさそうにし、続けて「しーちゃん、何かあったらすぐに俺のとこに来ていいから。だから、頑張れな」と、教室が離れているためすぐには助けに行けない。だから、困ったときはすぐに来ていい。迷惑かけていいからとの旨を伝えて。)

(/了解しました！こちらも少々長くなってしまいました…申し訳ありません…。)