【短編小説】タイトル、お題、なんでも相談所

【短編小説】タイトル、お題、なんでも相談所

時の旅人  2019-04-11 22:06:09 
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主に小説のタイトルやお題を募集したりするところです。初心者大歓迎。

例えば、誰かが適当に考えたお題で小説を書くとか、逆に自分でお題を挙げて誰かに小説を書いてもらうとか。
同じお題で小説書きあったり、タイトル交換したり、誰かが絵を描いてそれをもとに小説書いたり、そこら辺はご自由に。

書いた小説は、ここに投稿して感想、アドバイスを貰うのもよし。チラシの裏に書くのもよし。ただ、ここに投稿する場合は他の人のためにも短編(多くて3レスくらい?)にしてね。連続投稿のしすぎには注意してください。

小説書くときの相談をしてもOKです。だれか答えてあげよう。

荒らし、暴言、悪口、他トピや他人に迷惑をかけるのは絶対に止めてください。みんなで仲良く書きましょう。

長々とすみません、わからないことがあったら質問してください。では。

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  • No.27 by まさむね@初心者  2019-04-14 10:39:24 

突然ですが入れてください……!

お題:ようやく掴んだ幸福さえも(byバドエン厨の友人)
以前書いたマフィアもので、主人公は元スパイ、スパイ時代は味方だった組と交戦中の話です。直接的な表現は避けましたが、人死にの描写がありますのでご注意を……



密偵と地獄に咲く花


 散々云われてきた事象かもしれないが、想像もつかない程の何かが起こると、人間、やはり実感が沸かないものだ。一種の防衛本能と言えるだろうか。信じられないというより、信じたくない。身体が、脳が、全身の細胞が眼前の出来事を拒絶して、これは嘘だと暗示をかけたがる。
 仕事柄、身近な人間を失うことなど常日頃から多々あった。だから慣れた気になって、本当に大切な者が消えるなんて状況下に置かれても、受け止められず、打開もできず、無様に喚くしかない。
 所詮、俺はスパイでいたときから何一つ変われていないのだと理解した。どうしてここに来て気付くのか、今更成す術もないので思考を擲って天命を恨むしかない。あまりに無力。全く嫌になる。
 なんだか朦朧として頭が回らない。視界と共に考えられる事柄がどんどん狭まっていき、そのどれもが浮かんでは消える。

 ああ。
 どうして。
 どうして。どうして。

「俺の命を引き渡せば、こいつはまだ生かしといてくれるんだろう」

 背を向けた親友はそう言った。
 あまりに絶句して、数秒腕の拘束への抵抗を止めてしまった。それが不味かった。隙を見逃さなかった敵は、固定するようにうつ伏せになった俺の背中にずしりと体重をかけてくる。
 いよいよ身動きが取れなくなると、視覚が鋭敏になり始めた。見慣れた黒髪の向こうから、敵の男が胡散臭い笑みを浮かべて頷く様子が目に映る。今は敵に対する畏怖ではなく、得体の知れない恐怖と焦燥に駆り立てられていた。それが何かは解らない。解らない。解らないのだ。
 誰の顔つきも認識できないほどにぐわんぐわんと目の前が揺れ始めても、頷いた男の拳銃だけはやけにはっきりと見えていた。
 一瞬にして脳裏を過った恐ろしい想像に戦慄し、せり上がってくる絶望に耐えかねて、俺は喉奥から咆哮にも似た制止を叫び、必死に吐き出す。
 俺らしくない。偽りの愛情に縋って、あいつまでも殺めんと思案していた冷酷なスパイはもう何処にも居なかった。何故かは見当もつかないが、あいつの前では、あのファミリーでは、俺はごく普通の青年に引き戻されてしまう。マフィアでも内通者でも裏切り者でもない、ただの一人間に。

 いつもなら面倒臭そうに悪態を返してくるあいつが、いくら必死に呼んでも振り向こうとしなかった。
 代わりに、あちこちで響く悲鳴と銃声に紛れ、微かに震えた声が俺の鼓膜を揺らす。

「ばーか。あんたの為じゃねぇ、組の為です」

 またそれか、お前は。
 なんて、冗談言って笑いたかった。無情にも、今溢れてくるのは目頭の熱さだけだ。
 見え透いた虚勢だった。普段の斜に構えた態度は見る影もなく、親友の死への覚悟と躊躇がひしひしと伝わってきてしまう。その全てが、俺を信じ難い現実に追い込んでいくのだった。
 『他人の為に自分を犠牲にするな。』幾度言い聞かせたかも判らない。
 よりにもよって俺なんかの為に命を投げ出すんじゃねぇ。頼むから言うことを聞いてくれ。と、心拍を速める胸の内で何度でも願った。
 こんな小さな両手じゃ足りない。いつもいつも、掴んだ幸せが全てすり抜けていってしまうんだ。行かないでくれ。こんなにあたたかいものをもう手離したくない。だから、だから……
 たった数秒間の祈念も虚しく、あいつは笑う。

「じゃあな、××××。お前は──……」

 砕け散った。
 鈍いような発砲音と共に、地面に大輪の血花が咲き、ばたばたと花弁が散り敷かれていく。
 頬と額に生暖かい液体が貼り付いて、滲んでいた視界が赤に染まる。拘束が解かれたことにも気がつかなかった。
 涙すら出てこない。唖然と、呆然と、愕然と。ただ目を見開いて、スローモーションのように流れる光景を眺めていることしかできなかった。

 自分でも知らぬ間に叫んでいた。見っともなく、子供みたいに、魂を残らず絞り出すように、地面に向かって叫んでいた。

 銃声に重なったあの言葉を、自分は正しく聞き取れていたのか。それは定かではない。
 だけど、

『生きろ』

 あいつは最期、そう言っていた気がした。

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