レナード 2019-04-08 22:00:27 |
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(細い月の夜は嫌いだ。何度繰り返したって到底好きになんてなれそうにない。___愛しい彼が姿を消すこの夜では、しん、と静まり返る屋敷の中では、寝付くことさえ出来ない。屋敷を出ている彼の真意が優しさからだと言うことくらい承知の上、それを受け入れることが出来ないのは愛しい彼の鋭くセクシーなその牙がどこの雌とも分かりやしない汚らしい肉体に突き刺さる事が想像でも耐え難い。不貞腐れるように大きな尻尾を抱き締めるようにフカフカで柔らかなベッドに丸くなり、チクタクと繰り返す秒針の音だけを延々と聞いていて。そんな静寂が切り裂かれたのは、翼が空気を割く音が微かに届いたからで。伴って誰よりも愛しく誰よりも美味しそうな匂いが鼻先を掠めると大きな目を一層と大きく見開き体をはね上げるように起こした。戻って来た嬉しさに揺れる尻尾が動きを止め、反射的に浮かんだ喜色が鼻先にシワを刻む不機嫌なものに変化したのは大好きな匂いに交じる、気狂いを起こしそうな程吐き出したい雌の匂いに気付いたからで。ふん、ふん、くん、くん、嗅覚を頼りに少しずつ濃くなる彼の香りを辿る。一歩、二歩、「怒ってるのよ、簡単になんて許してあげない」頬に空気を貯め、ぷっくりと膨らませながら容赦のない呟きを漏らし見つけたその背中。誰が見たって心臓を高鳴らせる、一種のアートのようなその姿、そんな事もお構いなしと腰を入れた大きな動きで獲物を捉える時と同様に背中にしがみつき。「ダーリン、今日のご飯は私よりも美味しかった?そんなこと無いでしょ。私の方が美味しいのよ」首筋に鼻先を埋めると残り香が嫉妬心に火を灯す。正にマーキング、香りの上塗りのように身を寄せれば大好きな香りに頭がいっぱいになる。辛抱たまらない。怒ってるの、怒ってるから許してね、そんな言葉を裏に隠して今は生身のその肩をがぶりと噛みつき堪能し)
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