レナード 2019-04-08 22:00:27 |
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(美味い、なんてものではない。牙から脳髄を侵す血の味は、それがなくては生きていけないと、素直に認めざるを得ないほど甘美で極上の味わい。酩酊感にも似た幸福感がぞわぞわと背筋を駆け上り、もっともっとと血液を求める牙は、穿った二対の孔をぐりぐりと容赦なく抉るように動く。いつもならば理性が働いて自重する行為も、新月の夜となっては途中でブレーキをかけることは至難の業で。けれど少しだけ吸血の勢いが弱まったのは、貴女の独り言が耳に届いたから。こうやって貴女を貪り尽くすことをきらって他種族の女の血をつまみ食いしていたのだが、まさかそんな風に思っていたなんて。贅沢な独占欲に多幸感と罪悪感が入り混じり、謝罪の代わりに更なるご褒美を、と、深々と食い込んだ牙を一旦ずぶりと引き抜いて。口の端を伝う紅い蜜を舐めとりながら、器用にも牙の先端を使い、自分で自分の舌を浅く切り裂く。じわりと口内に滲む自身の鉄の味、それを感じる間もなく流れる様に深く口付けて。流血する舌で貴女の歯列や粘膜を舐めれば、きっと口の中一杯に吸血鬼の血の味が広がるだろう―自傷行為を伴ってまで吸血鬼が血を分け与えるなんて、前代未聞の行為。それほど全身全霊で貴女を愛しているのだと解らせる様に幾度も角度を変えてから口を離せば「世界一美味い。矢張りお前のでないと駄目だ、ティーナ」乱れた呼吸をそのままに、わざと息を吐き掛けるかの如く、ふさふさとした毛に包まれた耳に唇を押し付けながら本心を囁いて。ふわりと嗅覚を刺激する髪の香りに、鎮まりかけていた本能が呼び起こされ、半ば無意識の内に獣の耳にがぶりと咬み付き牙を突き立てて。あむあむと顎の力に強弱を付けながら、飽きることもなく流れ出る鮮血を味わって)
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