アルヴィオン 2019-03-26 02:55:08 |
通報 |
(月が天高く昇る時間帯には微睡からも醒め、何もせずとも、こうして彼と二人で過ごすことが多かった。大きなベッドの端に腰かけ、こちらを見下ろす黄金の瞳を真っ直ぐに見上げる。互いに言葉も少ない中、思わずと言ったように口にされた賛辞はこの上ない祝福のように耳へと届き、とくりと脈打った心臓の上に手を添えた。そんな心情をそのまま表わすように口元を緩めて嫋やかな微笑を浮かべてみせれば、それが功を奏した訳でもないだろうが、男らしく無骨な指先がまるでガラス細工でも扱うかのように頬へと触れて「そんなにそうっと触れなくたって、わたし、壊れたりなんてしないわ」だから、もっと望むままに、遠慮などせずに触れていいのだと。ひんやりとした体温を心地よく感じながら、彼の心境を知ってか知らずか煽るような言葉を口にすれば、頬から顎、そして首筋へと触れた指先が不意に動きを止めた。どうしたのだろうかと不思議そうな表情で緩く首を傾げたのは一瞬のこと。彼の口から放たれた言葉に、そのまま凍り付いたようにぴたりと固まって「――――アル、ヴィオン?」込み上げて来る恐怖を必死に押し隠すように、努めて平静に彼の名を呼ばう。しかし返答は無く、手を離した彼はそのまま部屋を出て行ってしまった。離れたいと告げた声はいつになく苦しそうで、何度か目にした金に紅を混ぜ込んだような瞳は、何処か縋るような色を浮かべていた。愛する人の事なのだ。それだけでも本心から述べている事が分かる、分かってしまう。足元が崩れ落ちそうな不安に暫く動けずにいたが、ようやく意を決したように立ち上がり、身に着けていた簡素なワンピースにそっと触れて「――……!」言語ならざる言葉。魔法を行使するための言の葉を紡げば、純白の髪が仄かに光を帯び、ワンピースはその姿を変える。金糸で精緻な刺繍の施された布は、より上質な光沢を放つ漆黒。動くたびにひらめく袖と裾、そして大きく開いた襟には繊細な金のレースがあしらわれており、胸の下で結ばれた真紅のリボンは、線の細さと豊満な胸元をより強調するもので。ヒトの知識を元にしたドレスワンピースを身に着けて姿見の前でくるりと回って見せれば、そこに映る彼の色彩に勇気付けられたように部屋の外へと向かった。やがてバルコニーにその姿を見つければ、そっと扉を押し開いて彼の元へと歩み寄り「――アルヴィオン?」ともすれば夜風に掻き消されてしまいそうな声音で、そっと名前を口にする。吐く息は白く、吹き荒ぶ冷たい風に首を竦めながらも、その歩みは止まる事はなかった。ケープでも合わせるべきであったかと考えはするものの、それではきっと不十分。――否。それとも、こんな姿の方がはしたないと思われてしまうだろうか。最悪の想像ばかりをしてしまって真紅の瞳を僅かに潤ませれば、ようやく辿り着いた彼の片腕を取って、そのまま縋るようにぎゅっと抱きしめ)
(/ご賛同いただけて大変嬉しいです!そして吸血鬼様の懊悩が伝わって来る、繊細かつ動かしやすい交流文をありがとうございます…!お言葉に甘えまして、早速ですが吸血鬼様を煽るべく着替えた、不安定故に甘えたな魔女に後を追わせました。
そのように手を染めてもルシェラを求めてくださるアルヴィオン様と背後様に、こちらこそ頭の下がる思いです。
はい、どうぞ末永くよろしくお願いいたします!こちらもいったん下がらせていただきますが、背後様も何かございましたら遠慮なくお声掛けくださいませ…!)
トピック検索 |