通り人 2019-03-25 11:25:45 |
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……今までの、僕…(耳に響く声を聴きながら思わず繰り返してはその意味を考える。今まで、というのは華々しい栄光のことだろうと分かっては以前の自分には戻れないのだと突きつけられている感覚に胸の奥にじわりと鉛を飲み込んだような重たく冷たい感覚を覚え。それだったら……と再度湧き立つ希死念慮に俯いていると更に告げられた言葉は、まるで自分を助けてやると言った風に聞こえて、緩く目を瞬いた。思わず顔を上げると男の顔を見上げ、微かに震える指先で掴んだ衣服に腕を通すと袖の長いシャツと黒地のズボンを穿いてからゆっくりと立ち上がり、拘束されてからは座りっぱなしだった体にはふらつきを覚えるが何とか自力で立ち、胸に隠したネックレスの宝石を服の上から強く握って)
………分かった、行くよ。アンタについていく。
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