通り人 2019-03-25 11:25:45 |
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( 萌、瞳の色は絶望か呆れか、憤怒か哀しみか。どんな背景だろうと今までにどれほどの功績だったろうとこの地に堕ちては盾も何もない。魅られるのはその“価値”、下品な奴等が甘い砂糖に群がるように寄って集って“味見”したいのはその堕ちた栄光だけ。それは此処に居る飢えた獣には恐ろしい程に甘美で背徳な事だろうか、この目の前の子供も何処か見覚えのある顔かと思っていたが、有名な会社の次期社長と云われていた筈。そんないかにもな奴でも堕ちる時は堕ちる。全てを奪われ、人間とも思えないようなまるで下僕の様な扱いを受け中には家畜のようになっている奴も居る程。少しばかり落ち着いたか、モゴモゴ告げられた内容を聞き受けとめては手を離しながら立ち上がり )
──生きろ。もう『今までのお前』は居ない、直ぐに断ち切れとも言わない……とりあえず、服を着ろ。ここを出る。
( 眼下に見下ろす相手はどれほど小さいか。まだ年端もいかない子供が泣きも喚きもせずただ絶望に打ちひしがれ、死を待つだけの負の感情を抱かせる程の出来事は一生消えることは無いだろう。心に植え付けられた種は酷く、深く、太く蔦のように絡みついて離してはくれないかもしれない。それでもそれを踏台にしてでも生きなければ此処では直ぐにでも命を落としてしまうのは目に見えている。正直な所を思えばこの廃れた街で人ひとりを面倒を見るのは自殺行為に等しいが、何故か、その理由を問われれば回答に困るが放っておけないと心の隅で少しだけ思うような気もする。迷いかもしれないが、ひとつ溜息を零しては先程床に放り投げた衣類へ視線を移しながら伝え )
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