H∧L 2019-03-23 09:29:55 ID:6b716f026 |
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短編小説です。
「あの時、あの瞬間。あの言葉を」
ー キミはさ、ボクのこと…嫌い? ー
そんな、単純な問い掛け。
僕は咄嗟に、答えることが出来なかった。
「嫌いじゃないよ」
そのたった七文字の言葉が、出てこなかった。
その子は、踵を返した。
『じゃあね』
何故だか、酷く悲しそうな顔をして。
「待って」
ああ、こんな言葉は出てくるのに、
大事な言葉が出てこない。
『…なあに?』
その子は、ゆっくりこちらを振り向いた。
「僕は…君が」
この先が、出てこない。
言葉を紡いだ、僕は…こう言った。
「…何でもないよ、また明日」
『…そっか』
その子は、本当に居なくなってしまった。
…本当に、僕は意気地無しだ。
…彼女を救えたのは、僕だけだった筈なのに。
…次に、彼女を見たのは、明日の新聞だった。
《○○市の私立高校に通う×××さんが、昨日
△△山の山中で遺体となって…》
…僕は、この言葉を繰り返していた。
「あの時、あの瞬間…あの言葉を」
どうでしょうか?お楽しみ頂けたなら幸いです。
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