◎ 2019-02-17 20:30:14 ID:4556a69d2 |
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(自分が含みのある言い方をしたせいでもあるが、名前呼びを一蹴した相手の鋭い語気に僅かに目の奥を鈍く光らせたようで。だが直ぐに何時もの捉えどころの無い曖昧な笑顔に戻り。相手は玲の咎めに対しては表情を和らげ強くは言えない様子、兄弟三人の仲の良さを垣間見ると共に自分はその中の人間ではないと若干の疎外感を自ずから思い直し、あまり感情移入しないようにと自制し不器用にも温かな輪から距離を置く。只の一時の遊び相手だ、気を許すつもりは無いと頑固な決心を内心で反復して。そんな中、食器を洗ってくれている怜に軽く礼を言いこの場を後にしようとすれば“お願い”という無垢な子供の声に呼び止められ。)
「.....勿論ですよ。彼の気持ちは少し、理解してしまいますから」
(決して仲の良い友人には見えない自分にお願いなど、学校では素直になれず本心を偽る相手の事を心配してだろう。勝手かもしれないが自分達二人には通じる所を感じる。仮面の奥に隠された内心、守りたいものは違えど隅に追いやられた本音は一抹の孤独を纏っているのではないか。もっとも自分は生きやすさの為の、ただの利己心から来るものかもしれないが。自嘲気味に思案した後、低い位置から送られる視線に腰を屈めこちらも目線を応じると穏やかな声色で答えを返し。嘘は付かなかった。本心である。良い意味でも悪い意味でも相手との関わりには利用価値があると思っているのだ。しかし一方で、不思議にも他者に向けるような単純な黒い感情を相手に向ける気は起こらず。正と負の感情が綯交ぜになって相手に向くのをひっそりと自覚し、複雑な表情で弟と妹に別れの挨拶をすると、不器用にも玄関で待つ相手の元に歩み寄り小さく頭を下げ)
「今日はお招き有難う御座いました。おかげ様で素敵な時間を過ごす事が出来ましたよ…...」
(履き慣れた革靴に足を差し込みながら目を細め饒舌にもつらつらと礼の言葉を並べ。温和な家の雰囲気ももう終わり、扉を開け外に出れば夜の冷やかに乾いた空気が肌を覆うのだろう。靴を履き終え相手の方に向き直ると笑顔のまま再度深く頭を下げ、帰宅しようと扉に向かおうとして___しかし一瞬の静止の後、唐突にその動作を止めると相手に向かい一歩踏み込み間合いを詰めて。強引にも有無を言わさぬ展開、相手の襟元に手を伸ばし掴むとぐっと引き寄せ、衣に寄った皺が淡く光を吸い込み反射する中、「貴方の事は嫌いじゃない。.....なあ、これから楽しみだな」__と。普段とは一転した荒い語調で告げ、楽しげに口端を歪めては掴んでいた襟元の布地をぱっと離し自由にして。咄嗟の出来事は自分でも良く分からなかった。屈折した独占欲だか何だか知らないが、中々なびく様子の無い相手へのちょっとした報復だろうか。幸せな家庭の時間へのむず痒さの八つ当たりかもしれない。考えても答えは出ない為、曖昧ににやついたまま今度こそ相手に背を向けると玄関の扉を軽い音を立て開き出ていこうとして)
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